ページの先頭です
ページ内移動用のメニューです。


このページは、目次の中の第1編の中の第1章の中の第3節 原油・天然ガス資源のページです。

  1. 原油埋蔵量と可採年数
  2. 非在来型石油資源
  3. 天然ガス資源

1. 原油埋蔵量と可採年数

原油(天然ガス)の埋蔵量は、通常、地下の油(ガス)層中に存在する原油(天然ガス)の体積を地表での状態に換算した量で表す。

原油(天然ガス)の埋蔵量を大別すると、原始埋蔵量[Original Oil(Gas)-In-Place]と可採埋蔵量(Recoverable Reserves)に分けられる。原始埋蔵量とは、その油(ガス)層内に存在する原油(天然ガス)の総量をいう。可採埋蔵量とは、原始埋蔵量のうち技術的、経済的に生産可能なものをいい、単に「埋蔵量」といった場合には、可採埋蔵量を指す。原始埋蔵量に対する可採埋蔵量の比率を回収率といい、地域や油田によって異なるが、約30%前後(天然ガスの場合には60~80%程度)といわれている。

可採埋蔵量は、確定度の高い順に確認埋蔵量(Proved Reserves)、推定埋蔵量(Probable Reserves)および予想埋蔵量(Possible Reserves)の3ランクに分別される(図 1-1-3-1)。

図 1-1-3-1 原油(天然ガス)埋蔵量の概念図

また、究極可採埋蔵量(Ultimate Recoverable Reserves)とは、累積生産量+確認可採量+発見期待可採量+期待追加可採量(回収技術の進歩により追加される可採量)をいう。究極可採埋蔵量推定値としては、石油鉱業連盟(2017年)による4兆7,515億バレルなどがある。このうち1兆3,287億バレル程度は、既に生産されたとされている。

可採埋蔵量の多寡を評価する手法として、ある年の年末の確認埋蔵量(R=Reserves)をその年の生産量(P=Production)で除した数値が使われることがある。この数値を可採年数(R/P)といい、ある油田や地域で今後何年間生産が持続できるかの一つの指標として使われるが、原油価格や石油消費量の変動等によりこの数値も変わるため、可採埋蔵量を評価する絶対値としての役割はない。なお、R/Pは2000年以降、おおよそ45~55年の間で推移している。

ページの先頭へ移動します。


2. 非在来型石油資源

オイルサンド、オリノコヘビーオイル、タイトオイル、オイルシェールなどの非在来型石油資源は、埋蔵量が膨大ではあるが在来型石油資源に比較し開発・生産コストが高く、経済性を確保するためには主に技術開発による大幅なコスト削減と、一定水準以上の原油価格継続を必要とする。

過去、原油価格が高騰する度に関心を集めたものの、原油価格は変動が激しく、再び原油価格が下落すると関心が薄れるという傾向にあった。しかし、在来型石油資源の将来に向けた安定供給確保への不安や、近年技術開発が進みコスト削減が実現してきたこと、2002年の終わりごろから原油価格が上昇を始め高止まりが継続したことなどから、大きな注目を集め、カナダではオイルサンド、米国ではタイトオイルの開発が進んだ。

オイルサンド

オイルサンドとは、流動性をもたない高粘度の重質油を含む砂ないし砂質岩のことである。また、原油の軽質分が失われ、残査分であるアスファルトが主成分となっていることからタールサンドともいい、通常の原油の生産方式では坑井から採取できない。世界で最大のオイルサンド資源国であるカナダでは、原始資源量は約2兆4千億バレル、可採埋蔵量は1,697億バレルと推定されている。

オイルサンドに含まれる重質油分(ビチュメン)の回収方法には、砂ごと採掘(露天掘り)して熱処理を施す方法と、水蒸気の圧入などにより、地下で油分を流動化させて坑井から回収する方法(油層内回収)とがある。

回収されたビチュメンは流動性がなく、そのままではパイプラインで輸送することができないため、輸送可能な粘度まで軽質油等で希釈するか、精製装置で分解して通常の原油程度以下の粘度にする必要がある。

カナダのオイルサンド採掘現場では、隣接するプラントでオイルサンドからビチュメンを抽出し、蒸留した後分解・水素化処理(アップグレーディング)し、合成原油を生産して、カナダや米国の製油所に出荷している(図 1-1-3-2)。合成原油は減圧残油を含んでいないことから、一般の製油所では熱バランス上単独処理が難しい。また、セタン価が低く、煙点が低いなどの特徴があり、在来型原油に10~15%程度混合して処理するのが一般的である。

一方、ビチュメンをコンデンセートや合成原油で希釈したもの(希釈ビチュメン)を、そのまま出荷しているプロジェクトもある(図 1-1-3-2)。この場合、受け入れた製油所のプラントで、通常の重質原油と同様に希釈ビチュメンを分解・水素化処理する。

図 1-1-3-2 合成原油・希釈ビチュメンの生産工程

オリノコヘビーオイル(オリノコタール)

オリノコヘビーオイルは、ベネズエラ北部の中央から東部にかけて、オリノコ川北岸沿いに分布するオリノコオイルベルト(長さ700km、幅60km)に賦存する超重質油(API比重10°以下)で、オリノコタールとも呼ばれ、原始資源量は約2.1兆バレル、可採埋蔵量は575億バレルと推定されている。

オリノコヘビーオイルの性状は、カナダのオイルサンドとほぼ同様か若干重質ではあるが、油層深度がオイルサンド(概ね300m程度まで)よりも500~1,000mと深いために油層温度が摂氏50度と高く、加温なしで坑井を用いた生産が可能である。

油田から生産されたオリノコヘビーオイルは、軽質ナフサで希釈され合成原油製造設備まで輸送され、ディレイド・コーカーで熱分解され、水素化処理されて合成原油が生産される。現在4プロジェクトで合成原油を生産中であり、米国の製油所等で利用されている。カナダのオイルサンドから生産される合成原油同様、セタン価が低く、煙点が低いといった特徴がある。

このほかオリマルジョン(オリノコヘビーオイル70%に水30%と微量の界面活性剤を加えたもので、主として発電燃料用)としても商品化されている。

タイトオイル

タイトオイルとは、シェールオイルとタイトサンドオイルの2つをまとめた総称で、孔隙率・浸透率が共に低い岩石から生産される中・軽質油(API比重32度以上 = 比重<0.865)を指す。シェールガス生産で使われる坑井仕上げ(水平掘りや水圧破砕法等)技術を応用でき、また2008年以降米国市場でガス価格が低迷しているのに対して原油の高価格が続いたことから、米国でタイトオイルの生産量が急増した。米国での埋蔵地域は、モンタナ州とノースダコタ州にまたがるバッケン構造、テキサス州のイーグルフォード構造、ニューメキシコ州からテキサス州西部に広がるパーミアン構造などが有名である。また米国エネルギー情報局(EIA)の評価結果では、米国、ロシアのタイトオイル資源量が大きいとされている。

オイルシェール

オイルシェールとは、炭化水素の根源物質とされているケロジェンを多量に含む細粒で、緻密な堆積岩の総称であり、油頁岩(ゆけつがん)または油母頁岩(ゆぼけつがん)ともいう。オイルシェールは埋没深度が浅かったために地熱を十分受けられず、石油の生成過程の途中で留まっているものである。したがって、石油の生成過程の後半、すなわち加熱・分解を人工的に行う「乾留」という工程を経て、初めて石油として利用可能となる。オイルシェールを乾留して得られた石油は粗シェール油と呼ばれる。

世界のオイルシェール原始資源量は約2.8兆バレルと評価されており、アメリカ、オーストラリア、ロシア、中国等に大規模な鉱床が存在する。米国のグリーンリバー、カナダのアルバータ地方や、オーストラリアのクィーンズランド、中国の東北地方などが有名である。米国西部のグリーンリバーは原始資源量1.5兆バレルと評価されている最も大きなオイルシェールプレイであり、米国全体では2兆バレルの原始資源量が見積もられている。オイルシェールの生産コストは他の非在来型資源と比べても高く、現在、世界的に商業レベルとして生産しているのは、ドイツ、スコットランド、ロシア、ブラジル、エストニア、中国のみである。

ページの先頭へ移動します。


3. 天然ガス資源

在来型天然ガスは、地質学的産状により、原油とともに生産される油田ガス(随伴ガス=Associated Gas)、天然ガスだけを単独に生産するガス田ガス(非随伴ガス=Non-Associated Gas)および石炭の変成により生成された石炭ガスに分類される。また、成因別には、ケロジェンの熱分解により生成され、エタン以上の重質炭化水素を含む熱分解ガス(Thermogenic Gas)、嫌気性バクテリアによる有機物の分解で生成され、メタンを主成分とする微生物起源ガス(Biogenic Gas)および石炭ガス(Coal Gas)に分けられる。

最近の開発技術の進歩は、かつて回収が難しいと考えられていた非在来型天然ガス資源(シェールガス、炭層メタン等)の商業生産を可能とし、米国のシェールガスを中心に注目を集めているが、その開発の動きはカナダ、中国、豪州、東欧等世界各国に広がってきている。これらの非在来型天然ガスについては在来型天然ガスを遥かに上回る資源量が推計されている。

さらに、現在は技術的な課題を抱え商業生産は行われていないが、今後の商業化が期待されるものとして、メタンハイドレートが注目されている。

シェールガス

シェールガスとは、石油・天然ガスを生成する根源岩(頁岩、シェール)に残存する天然ガスのことである。シェールは砂岩と異なり浸透率(流体の流れやすさ)が非常に低いため、開発・生産にあたっては、水平坑井を掘削し、水圧破砕を行うことで地下の流動性を高めることが必要となる。これらを適用することにより、経済的な開発が可能となり、北米ではシェールガスの生産量が急激に増大した。この結果、北米ではLNGの輸入が減少し、その影響が欧州等にも及び、「シェールガス革命」と呼ばれている。しかし、2009年ごろより北米においては天然ガスの供給量増加に伴い天然ガス価格が低迷したため、プロパン/ブタン、コンデンセートなどを多く含む液分リッチなシェールガス田の開発が盛んになっている。

炭層メタン(CBM)

炭層メタンは、英語ではCoalbed Methane(CBM)と呼ばれ、石炭の生成過程で生じたメタンガスが、地下の石炭層中に吸着されるかまたは石炭の微細な隙間や割れ目に取り込まれるかたちで貯留されたものである。北米、豪州、中国、インド等で開発、生産され、豪州クィーンズランド州ではCBMによるLNG事業が実現した。

メタンハイドレート

メタンハイドレートとは、地下に存在するメタンガス分子が水の結晶構造に閉じ込められた水和物のことである。生産方法、生産量の予測等に技術的な課題が多くあるため、精度の高い埋蔵量評価は現段階ではできないが、全世界の資源量は在来型天然ガスの埋蔵量の2~10倍と推定されており、21世紀の有望なエネルギー資源となる可能性を秘めている。日本近海にも存在することが確認されており、国が主導する開発-生産に向けた研究が進められている。2018年5月に閣議決定された第3期海洋基本計画では、「平成30年代後半に民間企業が主導する商業化に向けたプロジェクトが開始されることを目指し、将来の商業生産を可能とするための技術開発を進める」という目標が掲げられ、それを受けて2019年2月に見直された海洋エネルギー・鉱物資源開発計画において開発スケジュール等の具体的な計画が改定された。

LNG(液化天然ガス)

LNGは「Liquefied Natural Gas」の略で、「液化天然ガス」と訳される。LNGは、メタンを主成分とした気体の天然ガスを原料に、これを-162℃という超低温に冷却して製造される無色透明・無臭の液体である。

液体のLNGは、気体ガスの時と比べてその体積が約600分の1まで減る。この性質を利用することで、タンカー等での効率的な輸送や貯蔵が可能となり、需要地で再び元の気体ガスの状態に戻す(気化する)ことによって、都市ガス原料や発電所の燃料などに利用することができる。日本のようにガス田から遠く、かつ周囲を海に囲まれているなど、天然ガスのパイプラインを敷設することが経済的・物理的に困難な国や地域において、現在もLNGの導入が進められている。

LNGの国際取引は、1959年にLNG船メタンパイオニア号が米国メキシコ湾から英国へと初の大西洋横断を成功させたことで幕が開けた。日本では、これに遅れること10年、1969年に東京ガスがアラスカから根岸基地にLNGを受け入れたのが始まりである。日本はその後もLNG輸入を拡大させて、現在では世界最大のLNG輸入国となっている。

現在、世界の天然ガス需要量に占めるLNGの比率は約10%で、LNG生産国は約21か国、LNGを輸入・消費する国は、欧州・アジアなど約42か国になっている。

ページの先頭へ移動します。

[参考文献]
1)石油鉱業連盟:石鉱連資源評価スタディ2017年(世界の石油・天然ガス等の資源に関する2015年末における評価)(2018年3月)
2)(財)石油産業活性化センター:原油価格高騰下における非在来型"フィードストック"の動向に関する調査報告書(2006年3月)
3)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC):石油・天然ガス用語辞典
4)EIA:World Shale Resources Assessments
5)メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアムHP
6)GIIGNL:Annual Report 2020


ページの先頭へ移動します。

ページの終わりですページの先頭へ戻る