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CSR活動

「ポレポレ基金」活動レポート (2011年8月30日~9月30日)カフジ・ビエガ国立公園における類人猿の保護活動と環境教育

コンゴ民主共和国の東部キブ州にあるカフジ・ビエガ国立公園(地図参照)は、ヒガシローランドゴリラのもっとも大きなポピュレーション※1が生息する場所として知られています。この国立公園は標高600-1200mの低地部(5400km2)と標高1800-3300mの山地部(600km2)に分かれ、細長いコリドー※2が2地域をつないでいます。しかもここにはチンパンジーも生息していて、山地部はチンパンジーの分布域の上限となっています。この地域は世界で最も哺乳類の多様性が高いコンゴ盆地を形づくる重要な場所として1980年に世界遺産に登録されました。それはカフジが、これまで数百万年間にわたって何度も繰り返された地球規模の寒冷・乾燥化の気候変動の中で、避難林として森でくらす動物の生息場所となり続けてきた森だからです。その代表的な動物がゴリラというわけです。

ところが、1994年に隣国ルワンダで起こった民族衝突で大量の難民がこの地域に流入し、続いて1996年から起こった内戦によって多数の兵士がこの地で戦いを繰り広げ、人と自然の調和ある暮らしは根底から破壊されました。火山灰質の土壌から成るカフジ山一帯は農耕に適し、1平方キロメートル300人以上の高い人口密度があり、しかも年4%という人口上昇率があります。国立公園以外の土地はすべて農耕地であり、保護区内の自然資源は人々の自制によって守られていました。それが、内戦によって法の効力が薄れ、自由な交易が阻害されて、日々の食料を確保するために人々が一斉に保護区に侵入して野生動物を狩り、金やレアメタルなどの地下資源を採掘し、薪や建材を求めて木々を伐採するようになりました。2000年に実施した生息調査で、ゴリラの数は半減し、森が大きく焼き払われて畑に代わってしまいました。低地部と高地部をつなぐコリドーも人の手が入って動物たちのくらす場所を大きく変え、放置しておけば動物たちが移動できなくなります。

こうした情勢に大きな危機感を抱いた私たち日本の研究者とコンゴの研究者は、国立公園でゴリラのツアーガイドをしていた地元の若者たちと協力し、人とゴリラをはじめとする野生動物が共存できるような活動を推進していくことにしました。地元のスワヒリ語でポレポレ(日本語でぼちぼち)という言葉を取ってポレポレ基金(通称ポポフ)と名付けました。急がず、成果をすぐに期待せず、長い目で見てゆっくり歩んでいこう、という精神が込められています。

活動は主に、1)ゴリラをはじめとする野生動物のモニタリング、2)苗木センターの運営、3)環境教育、4)アートセンターの運営、の4つです。現在はまだ政治情勢が思わしくなく、日本や外国からボランティアの人々が参加するには危険な状況にあるので、活動は主に地元の人々と研究者が担っています。

こういったポポフの活動については、ホームページに掲載していますので、ぜひご覧ください。
http://jinrui.zool.kyoto-u.ac.jp/Popof/frame.html

ポポフの主力メンバーの女性たちポポフの主力メンバーの女性たち

ポポフの事務所でメンバーたちとポポフの事務所でメンバーたちと

1) 「モニタリング」は、コンゴ中央科学研究所のカニュニ・バサボセ博士とポポフ事務局長のジョン・カヘークワさんが担当しています。カフジには研究調査用のゴリラの群れと観光用のゴリラの群れが合わせて6群あって、すべての個体に名前がつけられています。毎日チームを組んで群れを訪問し、個体を確認しています。チンパンジーも一群が人付け※3されており、こちらにも別のチームが毎日訪問しています。ほかにもゴリラやチンパンジーの好む果実の成り具合をモニターし、気象観測をするチームがあります。

カフジのシルバーバックのニンジャカフジのシルバーバックのニンジャ

カフジで生まれた双子カフジで生まれた双子

2) 「苗木センター」は1994年の難民流入のころから続いていて、人々が保護区に入って木々を伐採しなくても済むように、苗木を村の周辺に植えて薪や建材の材料を支える木々を自ら作る活動です。苗木には成長の速いグレビレアの仲間やケドレアの仲間、ユーカリプタスの仲間などの種類を選び、最初に植樹した木々はもう胸高直径20cmを超える立派な木に育って、十分にその役割を果たしています。ポポフが運営している環境教育学級の生徒たちに苗木の育成を手伝ってもらい、それを定期的に近隣の村の人々に無料で配って植樹してもらっています。すでに60万本を超える苗木を育てて配りました。最近ではこの活動を知って、遠くの村から苗木をもらいに人々がやって来るようになりました。

苗木センターで苗木を育てる苗木センターで苗木を育てる

3) 環境教育は、明日の世代を担う人材を育成するためにもっとも重要な事業と考えています。内戦によって小中学校の教員に給料が支給されなくなり、多くの学校が教師不足になりました。今でも地元の人々はお金を出し合って教師の給料をまかなっています。ポポフはこうした学校を立て直し、そこに環境教育の学級を作って運営を始めました。校舎を新設して生徒を募集したのが国立公園のそばにあるアンガ学校です。ここには中学生約400人、小学生約800人が学んでいます。ほかにも近隣の村を回って出前授業をして、カフジの自然に対する正しい知識を伝える活動をしています。せっかく自然遺産がそばにあるのに、地元の子どもたちはその意義を知らず、教材もありません。そこで、私たち研究者が教材を作ったり提供したりして、学校教育のカリキュラム作りに協力しています。現在の課題は図書室の完備です。地元の言葉で学習できる本を作り、世界から本を集めて、子どもたちだけでなく多くの人々が集い、学習できる場を作ろうと活動しています。

ポポフの環境教育学級ポポフの環境教育学級

4) カフジに暮らしている地元のほとんどの人々は日本語も英語もしゃべることができません。私たち多くの日本人はカフジの人々の地元の言葉や一般に通用しているスワヒリ語も理解できません。ではどうやったら、私たちは情報を交換し、心を通じ合わせることができるのでしょう。それには言葉ではなく、アートや音楽を使ったコミュニケ―ションが重要です。地元の人々が作ったゴリラの絵や彫刻には、人々の自然観やゴリラに対する気持ちが反映します。それを受け取ることで、まだゴリラやカフジの自然を見たことがない人々に、メッセージを伝えることができるのではないか。また、自然と共存するためにアフリカの文化が育んできた様々な意匠をアートに込めることで、地元の文化も伝えられるのではないか。そうした思いからできたのがアートセンターです。地元で絵や彫刻を独学で学んだダビッド・ビシームワさんが中心となり、以前保護区で狩猟活動をしていた人々が制作に携わっています。ダビッドさんは日本で「ゴリラとあかいぼうし」という絵本を出版しています。多くのポポフグッズを制作し、海外にもファンの多いアーティストです。

ちょっと気取った子供ゴリラちょっと気取った子供ゴリラ

甘えん坊の赤ちゃんゴリラ甘えん坊の赤ちゃんゴリラ

※1ポピュレーション
野生動物の個体群(個体の集まり)をいう。
※2コリドー
離れた動物たちのくらす場所をつなげるための森林や草原、水辺。回廊(かいろう)ともいう。
※3人付け
餌などまったく与えずに人間の存在に慣れることで、自然状態で観察できる方法。

カフジ・ビエガ国立公園の地図(ポポフはKahuziと書いてある地域で活動しています)

カフジ・ビエガ国立公園の地図