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CSR活動

「ポレポレ基金」活動レポート(2015年7月1日~9月30日)ポポフの環境教育

ポレポレ基金日本支部 山極壽一 2015年10月

ゴリラの保護から環境教育学校立ち上げへ

1992年に設立されたポポフは、当初の目標として地元住民と国立公園との間に生じたトラブルを解消し、ゴリラを見にやってくる観光客の目を地元住民に向けさせ、地元に観光収入をもたらそうと考えていました。その一環としてゴリラをイメージした民芸品を作成したり、地元の人の伝統的な活動を見学するツアーを組んだりしたのです。観光客と地元民との交流を深め、ゴリラを保護する重要性を地元に認識してもらい、密猟や密伐を防ごうと考えたのです。
しかし、地元の人々があまりにもゴリラのことを知らず、国立公園や保護区がどのような理由で設立されたかを理解していないことに驚かされました。とくに、保護区になった場所で狩猟採集生活をしていたトゥワ人たちは学校に行ったことがなく、文字を読むことも書くこともできませんでした。これでは法律を理解してほしいといっても通じません。そこで、ポポフは各国の支部や知り合いから支援を募り、環境教育学校を立ち上げました。

ポポフでその動向をモニターしているチマヌーカ集団のお母さんと赤ん坊

内戦後に学校を復活

1994年に隣国ルワンダで起きた民族大虐殺で多くの難民がこの地に流入し、それが飛び火して1996~1999年にかけて内戦が勃発しました。政府は機能しなくなり、病院や銀行が閉鎖され、小中学校からも教員たちが次々に離れていきました。何とか志の少数の高い教員たちが、親たちからのカンパだけで子どもたちを教えていましたが、教材もなく、施設は老朽化するばかりでした。そこでまずポポフは、これまで学校教育を受けてこなかったトゥワ人の母親と就学前の児童たちを対象に学校を作りました。文字を十分に読めない母親たちに言語教育をして、子どもたちには自然と交わる知識を教えました。次に、小学校と中学校を新設して教材を寄付によって集め、近くにある中央科学研究所や農業研究所から支援を受け、研究者たちも協力して子どもたちを教えるようになりました。そして、どの学級でも環境学習とゴリラについての学習を義務付けることにしたのです。

今年も全員が大学入学資格試験に合格

これらの学校で学ぶ生徒たちは年々増えています。まだ政府からの教師や教材への支援が十分ではないので、親たちからわずかな授業料を徴収して給料や設備の維持に当てています。ポポフ日本支部からの支援金もこれらの維持費に使わせてもらっています。今では1000人近い生徒を抱える大所帯となりました。今年も最上級生で国家試験を受けた全員が合格し、大学へ入学する資格を得ました。公立や有名私立ではなく、地元の人々がお金を出し合って経営する地方の学校で、生徒がこんないい成績を修めるのは初めてで、全国的に大きな評判を呼んでいます。ただ、入学資格を得たものの、大学へ進学できる金銭的な余裕がある生徒はほとんどいないのが現状です。日本の方々からも奨学金を援助していただいていますが、まだ十分ではありません。大学に進学して自然保護、観光、農林業の発展に寄与したいと思っている生徒たちはたくさんいます。何とか生徒たちの望みをかなえてやりたいものだと思っています。

ポポフの学校を卒業後、大学で生物学・生態学を修めた先輩によるアンガ中学校の実習講義

日本からの支援も受けて図書館工事再開

また、これまでポポフの学校には図書館がありませんでした。植民地時代に建てられた中央科学研究所と農業研究所には立派な図書館があり、かつてはたくさんの貴重な書物があふれていました。科学ジャーナルもたくさん届いていて、研究者ばかりでなく、近隣の学生たちも現代科学の動向に触れることができました。しかし、独立後の経済状態の悪化や最近の戦争によってこれらの研究所は廃墟のようになってしまいました。多くの蔵書が盗まれ、郵便局が機能停止をしてジャーナルも届かなくなりました。電子ジャーナルにアクセスするお金もありませんし、そもそもインターネットを利用することが困難な状況にあります。生徒たちは、時折援助によって持ち込まれる欧米の本や、布教によって配布されるキリスト教の本しか実際に接する機会はないのです。学校には教科書もなく、先生たちが自分の知識や経験を黒板に書いて生徒たちに伝えています。これでは生徒たちが現代に役立つ知識を習得することができません。
そこで、ポポフは学校に図書館を建設し、世界に呼びかけて必要な本をそろえる計画を開始しました。図書館の敷地をアンガ中学校の土地の中に確保し、設計図を作りました。予算との関係でポポフ日本支部と相談しながら、何度もその設計図を作り変え、やっと昨年の12月に見取り図が完成しました。エネゴリくんのクリック募金からも多額の寄付を受け、いよいよ工事が始まりました。なるべく地元住民の協力を得て、手作りのものにしようと、レンガを作るところから始めました。しかし、やっと土台ができて壁を塗り始めた矢先、今年6月に大雨が降り、道路が寸断されて必要な物資を運搬することが困難になりました。乾季の間に道路を補修し、9月にやっと工事が再開したところです。

翻訳のついた日本の絵本を読む子どもたち

ポポフ日本支部からは、「アフリカ子どもの本プロジェクト」の協力を得て8月に絵本を届け、さっそく子どもたちに読んでもらいました。フランス語の本は現地で教えている共通語ですが、日本語の本には現地の言葉スワヒリ語の翻訳をつけて絵本に貼り付け、子どもたちにも読めるようにしました。ちょうど夏休みで学校は休校になっていましたが、近所の子どもたちがたくさん集まり、熱心に本を読んでいたのがとても印象的でした。10月からは学校も始まり、多くの子どもたちに絵本が読まれています。子どもだけではなく、おとなたちも集まって世界の情報を学ぶことができる場にしようと張り切っています。図書館は今年中に完成予定で、それから多くの分野の本を各方面に呼びかけているところです。

配られた絵本を読む、アンガ中学校の生徒たち