ページ内移動用のリンクです


CSR活動

「ポレポレ基金」活動レポート(2016年1月1日~3月31日)カフジのゴリラは寄生虫除去の効果のある果実を食べています

ポレポレ基金日本支部 山極寿一 2016年4月

京都大学とコンゴ民主共和国の研究所の共同研究

カヒジ・ビエガ国立公園に隣接するコンゴ民主共和国中央科学研究所では、ここに生息するゴリラとチンパンジーに関する京都大学との共同研究が実施されています。このたび長年の調査が実って、ゴリラとチンパンジーの食べる果実に、寄生虫を除去する効果があることがわかりました。

お母さんのそばで私たちをこわごわながめる子どもゴリラ

お母さんのそばで私たちをこわごわながめる子どもゴリラ

この研究所では、1991年からゴリラとチンパンジーの集団を追跡し、その通跡に落ちている新しい糞を採集して内容物を記録しています。ゴリラはどんな果実でも種ごと飲み込んでしまうので、糞には種が出てきます。種の形からその果実の種類を見分けることができます。チンパンジーも種ごと飲み込むこともありますが、種を吐き出すこともあるので、直接観察して確かめた果実を記録しました。また、新しい糞には寄生虫やその卵が含まれていることがあります。これを顕微鏡で確かめて、寄生虫を同定します。

これまでに、19種類の寄生虫が発見されました。最も頻繁に含まれていたのは胞子虫類の仲間のコクシジウム(球虫)類で、ゴリラの糞の94%、チンパンジーの糞の93%に見つかりました。そのほかに、回虫Ascaris、捻転胃虫Haemonchus、糞線虫 Strongyloides、条虫類のMoniezaやTaeniaがゴリラとチンパンジーの1割以上の糞から見つかっています。また、ゴリラだけに多い寄生虫として肝蛭Fasciola、線虫の仲間のTrichostrongylusが見つかりました。

これらの寄生虫を除去する化学物質として、サポニン、テルペン、ステロイド、アルカロイド、フラヴォノイド、フェノール、キノン、グリコシドがあります。カフジでゴリラとチンパンジーがよく食べる9種類の果実を調べると、これらの化学物質がたくさん含まれていることがわかりました。とくに、両種の類人猿が好むSyzygium guineense、Myrianthus holstii、Allophylus africanusにはこれらの化学物質がまんべんなく大量に含まれていることが判明したのです。

ゴリラもチンパンジーもたくさんの寄生虫をもっているのに、良好な健康状態を保っていられるのは、これらの果実を好んで食べるせいかもしれません。寄生虫への感染は、1990年代から最近まで続いていた内戦中に多くの人々が保護区に逃げ込み、その排泄物によって急増した可能性があります。今後は人間との接触を最小限に抑え、寄生虫を除去する効果のある果実のなる樹種を無くさないような配慮が必要だと思います。

残りわずか3,800頭のヒガシローランドゴリラ

さて、1994年に実施されたヒガシローランドゴリラの広域調査では、コンゴ民主共和国(当時はザイール共和国)の東部に、16,900頭(範囲:8,660~25,500頭)の生存が推測されました。その90%近くはカフジ・ビエガ国立公園の中かその周辺に生息しているとされていました。ところが、最近実施された調査をつなぎ合わせると、3,800頭(1,280~9,050頭)のゴリラしか生き残っていないことが判明しました。内戦の間にゴリラの数が70%以上減ってしまったことが明らかになったのです。しかも、カフジ・ビエガ国立公園の低地に生息するゴリラは1,272~2,518頭と推測されており、高地で数えられた170頭と合わせても3,000頭に満たない数です。多くの生息地が分断されて孤立しており、ゴリラが移動できない状態に置かれています。これでは、近い将来もっとゴリラの数は減ってしまうでしょう。

カフジ低地で食肉用に売られている野生動物

カフジ低地で食肉用に売られている野生動物

密猟防止の取り組み

こうした現状を打開する特効薬はありません。ポポフのメンバーは低地まで遠征して村々を回り、ゴリラをはじめとする野生動物を食肉として狩猟しないように訴えています。ヤギやブタを配って、野生動物の代わりに家畜を飼う指導も実施しています。どこの村でも、家畜さえいれば法を犯してまで密猟をする気はないと人々はいいます。家畜に加えて、各地で養魚池を作ってテラピアを養殖し、動物たんぱく質の確保を促進しているところです。

将来の密猟の防止には、次世代の子どもたちに自然を守る大切さを理解してもらうことが不可欠です。うれしいことに、長年の悲願だった図書館がやっとアンガ中学校に完成しました。子どもたちはとても喜んでいます。この図書館には中学生ばかりでなく、小学生や一般の村人たちも利用できるように設備を整えているところです。これから、世界各地の本をそろえて、子どもたちが広い知識を学び、多様な世界を理解できるようにしていきたいと思います。

アンガ中学校に完成した図書館アンガ中学校に完成した図書館

図書館の完成を喜ぶ中学生たち図書館の完成を喜ぶ中学生たち

参考文献

Kamungu S, Basabose K, Bagalwa M, Bagalwa B, Murhabale B, Yamagiwa J (2015) Phytochemical Screening of Food Plants Eaten by Sympatric Apes (Gorilla beringei graueri and Pan troglodytes schweinfurthii) Inhabiting Kahuzi-Biega National Park, Democratic Republic of Congo) and their Potential Effect on Gastro Intestinal Parasites. International Journal of Pharmacognosy and Phytochemical Research 7(2); 255-261 (ISSN: 0975-4873).

Plumptre AJ, Nixon S, Critchlow R, Vielledent G, Nishuli R, Kirkby A, Williamson E, Hall JS, Kujirakwinja D (2016) Status of Grauer’s gorilla and chimpanzees in eastern Democratic Republic of Congo. ISBN 10: 0-9792418-5-5 ISBN 13: 978-0-9792418-5-7.