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CSR活動

「WCSコンゴ」活動レポート (2013年11月1日~2014年1月31日)コンゴ共和国プロジェクト

西原智昭 2014年1月

クリック募金による寄付は、2013年11月から2014年1月までの期間では、引き続き、ゴリラの保全、調査、エコツーリズムを実施しているコンゴ共和国・モンディカの森での活動費の一部ほか、コンゴ共和国北部全体のゴリラの生息状況調査の準備費にも活用させていただきました。
この期間のモンディカを訪れたツーリストの数は、例年に比べはるかに少ない状況で、訪問者の総数は6人にとどまりました。最大の理由は、昨今さらに激化している隣国・中央アフリカ共和国の内戦とそれに伴う政情不安の影響があります。通常、ツーリストは中央アフリカ共和国のザンガ・バイとコンゴ共和国のヌアバレ・ンドキ国立公園との組み合わせ(ともに、世界遺産地域内)で訪れるため、結果的にモンディカへの訪問をも控える観光客が増えているものと思われます(図1参照)。ただモンディカは内戦の直接的な影響はいまのところなく、引き続きゴリラにもその脅威は及んでいません。前回報告しましたキンゴの傷もすっかり癒え、問題なく以前と同じく平穏な生活を営んでいます。

(図1)世界遺産地域内のモンディカの森とザンガ・バイの位置 (C)西原恵美子

(図1)世界遺産地域内のモンディカの森とザンガ・バイの位置 ©西原恵美子

訪問客が少なかったこの時期を利用して、国立公園基地のあるボマサからモンディカに至る約30kmの未舗装道路の整備を行いました。しばらく手を付けていなかったため、道路の両側の植物が生い茂り、車による移動がスムーズにいかなくなったためです。この道路は、モンディカの研究者やゴリラ・ガイド、キャンプ・スタッフ、そしてツーリストと、その食糧や装備・資材などを運ぶのに必要不可欠な動脈です。写真1の左の様子が道がふさがっている状態で、右の写真がその2週間後、道を切り開いた様子です。道開きは、半年に一度ほどのペースで実施します。ただこの道のメンテは、我々WCSのみによって行われるため、大型機械を導入することができません。炎天下の下、道の両側の草を山刀(山仕事に使用する、鉈状の刃物)で刈るという地道な手作業で、車一台が何とか通れるほどの道幅を確保しています。

(写真1)モンディカまでのアクセスとなる未舗装道路(左側が草本類で前方がふさがっている状態、右側が山刀で開かれた同じ道)
写真下部の白い部分は車のボンネット ©西原恵美子

コンゴ共和国北東部全体は、モンディカ地域だけでなく、健全な頭数のゴリラが生息していることが我々によるこれまでの調査でわかっています。2006年までの動物の頭数・分布調査、モンディカを含むサンガ川の東(ヌアバレ・ンドキ国立公園とその周辺域:図2の赤い点線で囲まれた部分)約28,700km2の地域では、約46,000頭のゴリラの生息が推定されました(Stokes et al., 2010)。またその後2011年に実施されたほぼ同地域での動物の頭数・分布調査らは、この地域のゴリラの頭数に有意な変化がなかったことがわかりました。これは、我々による20数年に及ぶ保全活動の賜物といっても過言ではありません。

(図2)コンゴ共和国北部の国立公園(緑色)、保護区(黄緑色)と森林伐採区(薄紅色)、中央を流れるのはサンガ川で、赤い点線で囲まれた地域が本文中で「サンガ川東側地域」で、赤い太線で囲まれた地域が「サンガ川西側地域」である

一方、サンガ川の西(サンガ川とオザラ・コクア国立公園に挟まれた地域:図2の赤い太線で囲まれた部分)約17,900km2の地域は、「緑の魔境」と呼ばれる森で、ゴリラの好きなクズウコン科の草本類の多い森として知られていました。その地域では、2007年の動物調査の結果、74,000頭余りのゴリラの生息が推定されました(Malonga, 2008)。サンガ川東地域のゴリラの密度が1km2当たり約1.6頭であるのに対し、西地域では1km2当たり約4.1頭です。この地域は、ニシローランドゴリラの高密度を有する貴重な地域です(写真2)。

(写真2)サンガ川西地域「緑の魔境」で観察された野生のニシローランドゴリラ (C)西原智昭

(写真2)サンガ川西地域「緑の魔境」で観察された野生のニシローランドゴリラ ©西原智昭

ただ、西地域では2008年以降動物の頭数・分布調査行われていないため、この2014年1月から、西原のコーディネートによるWCSチームによって調査が開始されます。この地域の一部では、一時的にエボラの蔓延があった上、熱帯林伐採区の拡大により密猟も増加している中、どの程度ゴリラの頭数が変動したか、結果を知ることは、今後の保全戦略を立てる上で肝要です。調査は今年の7月くらいまでには終了し、分析結果は、早ければ2014年末には示されるでしょう。今回の報告書の期間、この動物センサス・プロジェクトの準備(担当者のコンゴ国内出張など)を開始し、クリック募金の一部をその費用に活用させていただきました。
このようにクリック募金は、モンディカだけでなく、地球上最大のゴリラの頭数を誇るコンゴ共和国北部全体における野生のニシローランドゴリラの保全・研究活動に大きく貢献し続けていきます。今後とも、ご支援をよろしくお願いいたします。

参考文献

  • 西原智昭に関する記事, 2001. アフリカ徒歩横断第2回 緑の魔境を抜けて.日経ナショナルジオグラフィック 3月号(36-79).
  • Malonga, R., 2008. Final Report on Elephant and Great Apes Survey in the Ngombe FMU and Ntokou-Pikounda Forest, Republic of Congo. WCS Congo January 2008.
  • Stokes, E. et al., 2010. Monitoring Great Ape and Elephant Abundance at Large Spatial Scales: Measuring Effectiveness of a Conservation Landscape. PLoS ONE Volume 5 Issue 4: 1-18.