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CSR活動

「WCSコンゴ」活動レポート(2016年4月1日~6月30日)コンゴ共和国プロジェクト

西原智昭 2016年7月

クリック募金による寄付は、2016年4月から2016年6月までの期間では、引き続き、ゴリラの保全、調査、エコツーリズムを実施しているコンゴ共和国・モンディカの森での活動費の一部に活用させていただきました。とくに、この期間は、モンディカでの新たな活動と次の戦略へ向けた準備、それにともなう建造物の追加に必要な資材の購入、さらに新たなゴリラのデータ収集に関する手法の導入など、事業の移行期に当たりました。

モンディカにおけるゴリラの動向

これまで通り、モンディカの研究者は、キンゴ・グループとブカ・グループを追跡して資料を収集することに尽力を注いでいます。この3カ月間の間、キンゴ・グループは88日440時間、ブカ・グループは87時間420時間の観察をそれぞれ行いました。両グループとも頭数の変化はなく、それぞれ13頭、8頭です。

またこの期間の2つのグループの遊動域は、これまでとほぼ同じで、キンゴ・グループの領域の方がブカのそれよりも大きく、遊動域のオーバーラップはほとんど見られませんでした(図1)。病気の兆候は数頭のゴリラで観察されましたが微々たるもので、全体では両グループの個体は健康状態であったといえます。キンゴはメスとの生殖行動が観察されたため、来年の早い時期に新生児が期待されるところです。また、中央アフリカ共和国側(下図で黒線の左側)で、研究者が銃声を聞きましたが、直ちにパトロール隊が出動し、モンディカ地域への密猟者の侵入を防ぐことができました。

図1:キンゴ・グループの遊動域(赤線枠内)とブカ・グループの遊動域(青線枠内)。各領域内の赤あるいは青の色が濃いほどそれぞれのグループの滞在頻度が高いことを示す©WCS Congo

またこの期間内、経験豊かなコンゴ人研究アシスタントにより、モンディカ地域を含む広域において、ゴリラおよびチンパンジーの生息分布調査が開始されました(図2)。全部で28の直線調査路(それぞれ1.5 km)沿いに観察されたすべてゴリラあるいはチンパンジーのベッドをカウントするものです。全部で413のベッドが観察され、そのうちゴリラのものと特定できたのは140、チンパンジーのものは7で、残りの266のベッドはどちらのものか判断できませんでした。同じ調査は2017年春に敢行される予定で、時期の違いにより、ゴリラとチンパンジーの分布がどのように変わるかが検証されます。

図2:類人猿のベッドをカウントする広域調査地域(濃い黄緑色)。赤のラインが調査路。モンディカ地域は中央部やや上の二本の川に挟まれた部分に相当する©WCS Congo

データ収集のための新規手法とソフトウェア

これまでゴリラの食べ物や移動に関する位置情報などの基本的データ収集は、まさに、紙と鉛筆を使っての記録していく手法でした。この報告書の期間より、iPadによるデータ収集の手法へ移行しつつあります。現在、モンディカの研究者の間で、その使い方、データ入力の仕方などの研修を現場で実施中です。行動学的なデータも、各個体の行動を系統的にデータ収集していくことができるソフトウェアを使用し、それもiPad上でデータ入力するように移行中です。前回の報告書でも述べましたが、ゴリラの健康状態の査察をモンディカでも本格的に開始いたしましたが、これに関しても各個体のデータ収集時にスムーズにデータ入力していく手法に変換中です。

またiPadを使用することで、データ収集時に同時に写真や映像をオンタイムで記録することも可能であり、より分析もしやすくなります。それはネット環境が確保されれば、いずれブログなどオンラインで、モンディカのゴリラの状況を随時視覚的にお知らせできる日が来るかもしれません。

これと並行し、前回報告しましたモンディカのスタッフ(トラッカー(森の案内人)、研究者、コックなどキャンプ・スタッフ)に対しての健康診断だけでなく、ゴリラと人間との間でお互い感染する可能性のある病気に対しての予防接種への準備も進んでいるところです。

今後のモンディカ進展へ向けた新たな戦略

モンディカにおける研究とツーリズムをさらに進行させていくために、キンゴ、ブカに次ぐ第三のゴリラのグループの人付け作業が開始することが緊急課題です。まずそれには、必要な人員をさらに確保する必要があります。そうした新しいメンバー(研究者と先住民ガイド)がモンディカ・キャンプに常駐できるための住居環境の拡張・改善が最初のステップです。そのため、この報告書の期間に、500本相当の木材を準備しました(近隣の伐採会社よりFSC認証付きの木材を購入しました)。現在、木材やセメントなど必要な資材をモンディカ・キャンプに輸送中しつつ、建造物の基礎を作りつつあります(写真1)。

FSC認証:FSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)は、木材を生産する世界の森林と、その森林から切り出された木材の流通や加工のプロセスを認証する国際機関。その認証は、森林の環境保全に配慮し、地域社会の利益にかない、経済的にも継続可能な形で生産された木材に与えられる(http://www.wwf.or.jp/activities/nature/cat1219/fsc/より)

写真1:モンディカ・キャンプ地における先住民ガイド用のより大きな小屋の基礎部分©WCS Congo

同時に、これまでツーリズム用に使用してきた大型テントとその土台となるプラットフォームの修繕も並行して準備しています。この改修工事のため、現在ツーリズムは閉鎖中ですが、2017年よりツーリズムの活動は再開される予定です。

データのデジタル化に伴い、さらなるエネルギー源が必要となります。モンディカではソーラーシステムと緊急時の小型発電機の両用でこれまで対処してきましたが、より多くのエネルギーを得るために、ソーラーパネルをより太陽光の当たる、キャンプ地すぐ脇の開けた沼地に設置する計画です。その土台を作る作業がありますが、これは、今年の9月末前までには設営が完了となる予定です。

これ以外に現在開始し始めた新しい戦略は2つあります。一つは、コンゴ人研究アシスタントへの英語指導です。コンゴ共和国の第一公用語はフランス語であり、多くのコンゴ人は英語を学校で習うものの、実践的な使用ができないのが現状です。研究者にとって英語取得は不可欠なことです。ゴリラ研究の論文を読み書きするのにも重要ですし、英語圏のツーリストにゴリラの説明をするのも彼らの役割だからです。もう一つは、ゴリラを追跡する能力をもつ先住民ガイドへのデータ収集トレーニングです。研究者がいないときでも、彼らがゴリラを追うときに、最小限のデータを収集するようになれば、さらにデータの量も質も向上すると考えられています。すでに記載したようなiPadを導入することで、文字がなくてもビジュアル化した画面上にデータ入力をすることが可能になります(写真2)。いま、これら2つの研修を試験的に開始しているところです。

写真2:ゴリラの採食行動のデータ収集の手法を学んでいる先住民ガイド©WCS Congo

このようにクリック募金は、モンディカだけでなく、地球上最大のゴリラの頭数を誇るコンゴ共和国北部全体の野生のニシローランドゴリラの保全・研究活動、ツーリズムの進展に大きく貢献し続けていきます。今後とも、ご支援をよろしくお願いいたします。