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CSR活動

「WCSコンゴ」活動レポート(2016年10月1日~12月31日)コンゴ共和国プロジェクト

西原智昭 2017年1月

クリック募金による寄付は、2016年10月から2016年12月までの期間では、引き続き、ゴリラの保全、調査、エコツーリズムを実施しているコンゴ共和国・モンディカの森での活動費の一部に活用させていただきました。筆者は、10月後半には、ゴリラとその生息環境である森林保全を含めた保全教育の国際会議の場である「第23回国際動物園教育者会議」に参加し、保全教育への国際的知見に見識を広めました。その渡航費・滞在費の一部にもクリック募金の一部を使用いたしました。

モンディカにおけるゴリラの動向

これまで通り、モンディカの研究者は、キンゴ・グループとブカ・グループを追跡して資料を収集することに尽力を注いでいます。この3カ月の間、キンゴ・グループは61日(432時間)、ブカ・グループは64日(482時間)の観察をそれぞれ行いました。両グループとも頭数の変化はなく、それぞれ12頭、7頭でした。

ゴリラの親子©WCS Congo

この期間の2つのグループの遊動域は、これまでとほぼ同じで、キンゴ・グループの領域の方がブカのそれよりも大きく、遊動域のオーバーラップはほとんど見られませんでした(図1)。図1では月ごとのそれぞれのグループの遊動域が変わっていくことが示されています。目立った特徴は、キンゴ・グループが12月になって、図の右上の川(ンドキ川)を超えた遊動域であったことです。これは、12月になり果実が少なくなり、草本類の食物を探しに遊動域をンドキ川流域の沼地にまで拡大したからだと推測されます。

図1:キンゴ・グループの遊動域(エメラルド色:10月、薄水色:11月、青色:12月)とブカ・グループの遊動域(薄紅色:10月、薄橙色:11月、朱色:12月)©WCS Congo

10月初旬、調査地域内で、一頭で遊動している大人オスが地上でうずくまっているのが発見されました。手と膝にひどい傷を負っていたところから、この個体は樹上から落ちたものと研究者は判断、観察を続けましたが、10月5日には健康状態は悪化し、死亡が確認されました。

モンディカ地域における密猟

報告書期間中である10月22日に、モンディカ・キャンプから1.5kmほどの距離の森の中から銃声が聞こえました。国立公園の森林警察が急遽駆け付け、その領域を捜索しましたが、密猟者はすでに去った後で、密猟者の検挙には至りませんでした。引き続き、研究者の情報をもとに、モンディカ周辺地域での密猟者対策に力を入れております。

モンディカ・キャンプでの電気柵とソーラーシステム

昨今、モンディカ・キャンプにマルミミゾウが現れるようになり、とくに、研究者やガイドの日常の食料を蓄えておく倉庫に接近するようになりました。これを回避するために、研究者グループは、倉庫の周辺に電気柵を設置し、その結果、ゾウが食料倉庫に近づく頻度も少なくなってきました。

夜間キャンプ地に現れたゾウとそれによって被害にあった食料倉庫©WCS Congo

電気柵で囲われた食料倉庫©WCS Congo

より効率よくキャンプでの電源を確保するために、ソーラーパネルの位置を変更しました。日中、日光が常時当たる河川域を場所に選び、キャンプのすぐ横を流れるモンディカ川に設置しました。これにより、電気の恒常的な供給が可能となり、特に新たに設置した食料倉庫周辺の電柵の電源にも役立っています。

新たにモンディカ川に設置されたソーラーシステム©WCS Congo

国際動物園教育者会議への参加

2016年10月18日から22日には、ゴリラとその生息環境である森林保全を含めた保全教育の国際会議の場である「第23回IZE(International Zoo Educator) 国際動物園教育者会議がアルゼンチンで開催されたました。筆者は保全教育への国際的知見に見識を広めるために参加し、また今回は同じくアフリカ熱帯林に生息するヨウムの保全について口頭発表を行ないました(写真6)。ヨウムもゴリラと同様、果実をよく採食し種子散布を行なう点、熱帯林生態系の意地に不可欠な存在であるにもかかわらず、日本を含めた世界中からのペット需要のため、違法捕獲や密輸が横行し、その生息が危ぶまれているのです。

発表では、野生ヨウムの生存危機の現況を報告しつつ、筆者が帯広動物園での協力のもと使用した「フォトブック」を使用した保全教育ツールを紹介しました。

写真6:IZEで口頭発表する筆者©Francis Tsang

保全教育ツールとして、フォトブックが従来のものにはない画期的な特徴は、まずテーマに関心のある「特定の参加者」を期待できる上、自ら「参加」して独自の「ストーリー展開」で、自ら「写真」を選び、「メッセージをクリア」に作りながら、写真とメッセージが一体化となったフォトブックを作成していくところにあります。そしてそれは参加者同士で「協議」しつつ「修正」が可能であり、「正確な情報」を満載した写真付きの「ビジュアル」版であるゆえ、小学生でもあるいは専門分野でない人にも「わかりやすい」保全の教材が完成されます。そして、各参加者がその出来上がったフォトブック最終版をもとに、さらに家族・知人など身近なところから「メッセージを広げていく」ことが可能で、その輪の広がりから「普及効果」も期待できるのです。
今後、このフォトブックに関しては、筆者は、同様の要領でゾウや類人猿など様々な野生生物やFSCなどの認証制度普及のための保全教育ツールを展開していく計画です。

フォトブック作成へ向けた初日の講義(左)、写真を選択しメッセージを作る二日目の作業(中央)、完成して印刷されたフォトブック(右)
©帯広動物園

モンディカへの研修者

2016年10月には、アメリカの博士課程在中の研究者がモンディカを訪問、ゴリラの樹上での移動様式や行動をテーマに研究をしました。

また、日本人学芸員二人がアフリカ熱帯林地域を研修目的で訪問し、12月2日から4日の間、モンディカも訪問しました。一人が哺乳類、もう一人が昆虫を専門とする学芸員は、モンディカの森で、キンゴとブカのグループを観察しただけでなく、植物や昆虫を始め熱帯林生態系全体について、筆者の指導の元、研修を実施、熱帯林の保全の重要さを理解しました。研修の成果は、学芸員の属するそれぞれの機関において、今後、講演やセミナーを通じて、多くの人に情報発信されていく予定です。

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モンディカを訪問中の研修員二人©西原智昭

このようにクリック募金は、モンディカだけでなく、地球上最大のゴリラの頭数を誇るコンゴ共和国北部全体の野生のニシローランドゴリラとその生息地の保全・研究・教育活動、ツーリズムの進展に大きく貢献し続けていきます。今後とも、ご支援をよろしくお願いいたします。