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このページは、目次の中の第1編の中の第4章の中の第1節 液化石油ガス(LPガス)のページです。

  1. LPガスの位置付け
  2. LPガスの生産と規格
  3. LPガスの特性
  4. LPガスの用途

1. LPガスの位置付け

液化石油ガス(Liquefied Petroleum Gas:LPG、以下「LPガス」と称する)は、炭素数が3~4の低級炭化水素を主成分とする燃料の一種であり、一般には「プロパン」「ブタン」などとも呼ばれている。

LPガスは、常温常圧で気体であるが、加圧または冷却すると液化する。液化された状態では、その体積は気体の状態と比較して約250分の1に縮小するので、輸送、貯蔵、消費の各段階で簡便に取り扱うことができる。灯油、ガソリンなどの液体燃料と都市ガスなど気体燃料のちょうど中間に位置付けられる燃料である。

このLPガスが日本で市場に出回り始めたのは、1955年ごろからである。この背景には、石油精製業および石油化学工業の急速な発展によって、副産物として出てくるガスから生産されるLPガスが増加したことがある。当初は主として家庭用および業務用の容器詰めプロパンとして販売され、木炭、石炭、練炭などに代替して需要を伸ばすとともに、一方、同時に生産されるブタンについては工業用の用途を開拓してきた。

また、1961年からは中東からLPガスの製品輸入が開始され、1962年にはタクシー燃料としての利用が始まった。

LPガスは、現在では家庭用・業務用を始めとして、工業用、都市ガス用、自動車用、化学原料用など幅広い用途で使われており、2017年度の需要は1,468万トンである。特に家庭用では2,400万世帯(全国世帯数の約半分)で使用され、業務用では食品加工業での利用が多く、自動車用ではタクシーを中心に約21万台(日本LPガス協会資料より)で使用され、国民生活には欠かせない燃料となっている。さらに、最近では、「ガス空調」など電気に対抗する商品や高効率化・省エネ化・省CO2化を活かした新用途開発(エネファーム、エコジョーズ、エコウィル)など、地球環境保護に対応できるエネルギーとしての位置付けも高まりつつある。

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2. LPガスの生産と規格

LPガスの生産

LPガスは、主として次の3つの方法により生産される。

  1. 油田から原油を生産する際に随伴して生産されるガスから分離精製する
  2. ガス田から天然ガス(主としてメタン)を採集する際に分離精製する
  3. 石油精製工場・石油化学工場で副生するガスから分離精製する

LPガスの規格

(1)法律で定められている規格

一般消費者向けのLPガスの規格は、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」(液化石油ガス法)により、い号、ろ号、は号の3種類が規定されている。家庭用・業務用に供給されているのは大半が、い号であり、プロパン分が80モル%以上(残りはブタン分)の製品である。

(2)JIS規格(JIS K 2240-2007)

1種(家庭業務用)と2種(工業用、自動車用等)に大別され、1種(1号、2号、3号)は液化石油ガス法の規格と同一となっている。2種はプロパンの割合により、1号から4号までの規格がある。

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3. LPガスの特性

LPガスは、燃料として以下のように優れた特性をもっている。

(1)環境特性

LPガスは一酸化炭素のような有毒成分をまったく含まず、硫黄分も一般に0.0050質量%以下であり、また燃焼時の窒素酸化物(NOx)の発生が少なく、環境特性に優れた燃料である。

特に、地球温暖化対策の点からいえば、生産から消費までの二酸化炭素(CO2)の排出量がLNGとともに少ない燃料である。

(2)可搬性

LPガスの輸送および貯蔵は容器やタンクを利用して液体の状態で行い、消費の段階で気化させる方法を用いる。このため、可搬性が高いという特徴があり、都市ガスパイプライン網のない地域でのガス消費を可能としている。

(3)燃焼性

LPガスの発熱量は約99~128MJ/Nm3で、他の気体燃料に比べて大きな発熱量をもつ。燃焼させやすい、省エネ対策が容易であるなどの特徴があり、そのため対応する器具・機器も豊富である。

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4. LPガスの用途

家庭業務用

家庭用では、当初の調理主体の利用から、現在では給湯が消費の中心となっており、全国約2,400万世帯で使われている。

家庭用は年間423万トン(日本LPガス協会資料より2016年データ)が消費されている。1世帯当たり年間では約180kgとなるが、エコジョーズなどの高効率給湯器の普及に伴い、世帯当たりの使用量は減少傾向にある。

業務用では、主として調理・給湯・蒸気・空調の熱源として利用されており、推定需要量は204万トン(同2016年データ)である。

工業用

燃焼温度調整が容易、省エネルギーが容易、カロリー調整が自在、ハンドリングが簡便などLPガスのもつ特徴を生かして、鉄鋼業を筆頭として、窯業土石、輸送用機器、食料品、金属製品、非鉄金属、電気機器等の製造業で広く利用されている。

都市ガス用

都市ガスは、1872年横浜の地で事業化されたが、当初原料は石炭であった。その後の都市部の拡大により需要は飛躍的に伸び、1955年ごろからナフサが原料の中心となり、さらに1978年以降はLPガスの比率が高まってきた。しかし、1979年からは大手都市ガス会社を中心にLNG(液化天然ガス)化が進み、LNGが都市ガス原料の97%(同2017年データ)を占めており、LPガスは、主に都市ガスの増熱用として利用されている。

自動車用

自動車用はタクシー17.4万台、トラック他4.1万台の合計21.5万台(同2017年データ)の需要があるが、他燃料車への切替えにより微減傾向にある。

化学原料用

化学工業では、ナフサに代替することが可能なブタンが、エチレン原料として利用されている。また、製油所で生産されるプロパンの一部は、プロピレンの重要な原料となっている。需給は、ナフサとLPガスの価格バランスで左右される面が大きい。

電力用

1977年から火力発電用燃料としての利用が開始され、1983年には107万トンの需要をみるまでになったが、その後は減少傾向にある。

なお、2011年に起こった原発事故の影響で、2011年および2012年の需要は一時的に増大したが、2014年には震災前の30万トン、2017年は18万トンに減少した。



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