ページの先頭です
ページ内移動用のメニューです。


このページは、目次の中の第2編の中の第2章の中の第5節 金属加工油のページです。

  1. 切削油剤
  2. 圧延油
  3. 打抜き油、引抜き油、絞り加工油、鍛造油
  4. 熱処理油
  5. 防せい油

1. 切削油剤

金属(被削材)の切削や研削加工に使用される切削油剤の使用目的は、工具と被削材や切り屑との摩擦力の低減(潤滑作用)、構成刃先の生成防止(反溶着作用)、摩擦熱やせん断熱の冷却(冷却作用)および切り屑の排出(切り屑排出作用)等により工具寿命や工作精度を高めることである。

切削油剤には、主に潤滑作用を重視した切削加工に用いられる不水溶性切削油剤と、冷却作用を主目的として切削・研削加工に用いられる水溶性切削油剤があり、それぞれについてJIS K 2241:2017では含有成分、性状および性能等から細分化されている。

(1)不水溶性切削油剤

不水溶性切削油剤は、JIS K 2241:2017規格で鉱油に油脂類を添加した混合油(N1種)と、同様に極圧剤を添加した極圧油(N2種~N4種)に分類されている。

<混合油>

混合油は、油性の向上を目的に動植物油やエステル油等を鉱油に添加したもので、主に非鉄金属の切削加工や鉄鋼材料の軽切削加工に用いられている。

<極圧油>

極圧油は不水溶性切削油剤の主体をなすもので、塩素系や硫黄系極圧添加剤の作用により広範囲の加工条件に適用することができる。また、極圧油には硫黄系添加剤の反応性に起因する銅の変色(腐食)度合から、N2種~N4種に分類されている。

なお2000年に、有機塩素化合物を燃焼した際に発生するダイオキシンの問題を背景にして、JIS K 2241規格から塩素系極圧添加剤に関する項目が除外されている。

(2)水溶性切削油剤

水溶性切削油剤には、水に希釈すると白濁するエマルションタイプ(A1種)と、透明または半透明になるソリューブルタイプ(A2種)、さらに透明になるソリューションタイプ(A3種)がある。また、水溶性切削油は不水溶性切削油に比べ、使用液が変質しやすいことから液管理が重要であり、廃棄する際の廃水処理が必要となる。

(3)極微量潤滑加工用切削油剤

近年、切削加工時の切削油廃液の削減や作業環境の改善を背景に極微量の潤滑油を切削加工部分に供給するMQL(Minimal Quantity Lubrication)加工と呼ばれる加工技術が開発され、エステル油や植物油をベースにした専用の切削油が開発・実用化されている。

ページの先頭へ移動します。


2. 圧延油

圧延油とは、回転するロールの間に金属材料を通し、厚みを減少させる加工で使用する潤滑油である。圧延加工を材料の温度の違いにより大別すると、高温に加熱して圧延する熱間圧延と、常温で圧延する冷間圧延がある。圧延油は、ロールと圧延板との摩擦力を減少させるとともに、ロールなどを冷却してロール熱変形を小さくする働きをする。

圧延油には、油脂類や油脂と鉱油の混合油に水を溶解させたりして用いるソリューブル油と、鉱油をベースに油性剤を加えた鉱油系油がある。前者は、主として各種金属の材料の熱間圧延や鋼板の冷間圧延に、また後者は、鋼板を除く各種金属材料の冷間圧延油に用いられている。

(1)鋼板用熱間圧延油

ソリューブル油としては、鉱油にポリマー、油脂類を加えて水に分散させたものが主に用いられている。

(2)鋼板用冷間圧延油

牛脂系や合成エステル系油が多用されている。

(3)ステンレス、銅、銅合金用冷間圧延油

鉱油系基油にエステル系油性剤やリン系極圧剤を添加した4~15mm2/s(40℃)級油が用いられている。最近では、製品の薄物化やコストダウンを目的とした省力化が進んでいるため、潤滑性能に優れた圧延油が要求される。

(4)アルミニウム冷間圧延油

箔用圧延油には1.5~3mm2/s(40℃)級の、また条(板)圧延では2~5mm2/s(40℃)級の分留範囲の狭い低粘度油鉱油が多く用いられている。特に最近では、作業者の安全性を考慮し、芳香族含有量の低い基油が主流となってきている。この種の圧延油には、一般的に、潤滑性を向上させるために、高級アルコールやエステル、脂肪酸が添加されている。

ページの先頭へ移動します。


3. 打抜き油、引抜き油、絞り加工油、鍛造油

絞り、引抜き、打抜き、冷間鍛造などの塑性加工に用いられる潤滑剤は多種多様で、一般には鉱油を基油とし、これに油脂類、塩素系・硫黄系極圧添加剤等を加えた添加形潤滑剤が用いられる。しかしながら、切削油剤と同様、最近ではダイオキシンの発生の懸念から、塩素系極圧剤を使用した油剤は減る傾向にある。作業性の面では、脱脂が容易、材料への油付着量軽減などを踏まえて、低粘度化や水溶性加工油への移行が顕著に見られる。また、高温条件下での加工では、グラファイトや二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤を添加した製品が用いられている。

ページの先頭へ移動します。


4. 熱処理油

熱処理油は、鋼材の焼入れや焼戻しに際して、冷却剤あるいは保温媒体として用いられている。焼入れには、水や水溶性冷却剤なども用いられているが、鉱油系焼入れ油が一般に広く使用されている。 焼戻しにも鉱油が使用されるが、焼入れに比較すると数量的には少ない。

熱処理油は、JIS K 2242:2012により次のように分類される。

(1)JIS 1種

油温が常温から100℃程度の間で用いられる焼入れ用である。一般には、低粘度スピンドル油からタービン32クラスの鉱油に冷却性向上剤を添加した1種2号相当油が広く使用されている。しかし、形状の小さいもの、または焼入れ性(硬化性)のよい鋼材は、鉱油単体程度の冷却性能で十分な場合もあり、1種1号相当油も使用されている。

(2)JIS 2種

油温が120℃~160℃程度の間で用いられるマルクエンチ、あるいはマルテンパーと呼ばれる熱浴焼入れ用で、JIS 1種に比較して使用温度が高いことから、粘度、引火点、酸化安定性ともに高い油種である。JIS 2種は、高い硬度を要求されず、歪みが少ないことが要求される部品の焼入れに広く用いられている。

(3)JIS 3種

焼き入れた鋼材は硬いけれどももろいので、強靭にするために焼戻しを行う。JIS 3種は焼戻し用で、鋼材の保温媒体として用いられる。従って、JIS 2種と同様に高い引火点と熱・酸化安定性のよいことが要求される。一般には、JIS 2種と共通した油種が用いられている。

上記のJISで規定された熱処理油のほかに、水溶性焼入れ液やJIS 1種とJIS 2種の中間油温で使用されるセミホット用焼入れ油等が、広く用いられている。

ページの先頭へ移動します。


5. 防せい油

防せい(錆)油は、金属表面に保護膜を生成し、水分や酸素(空気)を遮断し、さらに、腐食性ガス、ほこり、塩分などのさび発生の加速因子から、金属表面を守るためのものである。

防せい油は一般に、鉱油を基油とし、防せい添加剤などを加えたもので主に鉄鋼製品やその製造工程中の半製品、機械部品等の、一時的あるいは長期間の防せいに用いられる。防せい油を使用する場合は、前処理から包装まで中断のない連続した作業で行うことが望ましい。また、防せい油の使用に当たっては、前処理(被処理材の洗浄と乾燥)、塗布方法、包装についても考慮し、適切な防せい油を選ぶことが必要である。防せい油の選択を行う場合には、次のような事項を考慮することが重要となる。

  1. 被処理材の材質、形状、大きさ、表面の仕上げ状態
  2. 防せい期間
  3. 塗膜に対する要求、塗膜の除去性
  4. 包装の有無

防せい油の種類は、JIS K 2246:2018規格で5種類に分類されている。

(1)指紋除去形防せい油(NP-0)

鉄鋼製品などの組立て工程で付着する指紋等の塩化物を除去する性能を有する防せい油である。

(2)溶剤希釈形防せい油(NP-1、2、3-1、3-2、19)

アスファルト、ワックス、ペトロラタムなどの基材を溶剤に希釈し、常温で塗布できるようにした防せい油で、金属面に塗布後溶剤が揮発して被膜を形成する。溶剤を多量に含むので、粘度や引火点が低いことが特徴である。

(3)ペトロラタム形防せい油(NP-6)

ペトロラタムを基材とする室温で粘稠な半固体状防せい油で、一般に加温浸漬法により塗布する。高度な機械仕上げ面などの防せいに用いられる。

(4)潤滑油形防せい油(NP-7、8、9、10-1、10-2、10-3)

石油系潤滑油を基材とした防せい油で、潤滑性能を兼ねている。一般機械用のもの(NP-7、8、9)と内燃機関用のもの(NP-10-1、10-2、10-3)とがある。

(5)気化性防せい油(NP-20-1、20-2)

密閉したタンク内部の防せいに用いるもので、直接油に接触する部分のほか、直接油と接触しない部分の防せい性も有する。



ページの先頭へ移動します。

ページの終わりですページの先頭へ戻る