公益信託ENEOS水素基金

第10回研究助成金の贈呈/研究助成対象者一覧

第10回 研究助成金の贈呈

第10回 研究助成対象者一覧 (敬称略:所属・役職は研究テーマ採択時のもの)

水素製造技術

大尾 岳史
(九州大学 水素エネルギー国際研究センター 学術研究員)

水素貯蔵・輸送媒体に関する技術

礒部 繁人
(北海道大学大学院 工学研究院材料科学専攻 特任助教)

張 浩徹
(中央大学 理工学部応用化学科 教授)

CO2固定化技術

天尾 豊
(大阪市立大学 複合先端研究機構 教授)

近藤 剛弘
(筑波大学 数理物質系物質工学域 准教授)

水素製造技術

水素発生材料や次世代エネルギー材料における触媒の水素発生挙動を直視できるナノスケール顕微システムの実現

大尾 岳史
(九州大学 水素エネルギー国際研究センター 学術研究員)

これまで触媒分野をはじめとした多くの分野で、電子顕微鏡観察がナノスケールの構造を明らかにしてきた。さらに近年では触媒材料において加熱・冷却などの、種々の動的な反応の様子がガス環境を制御しながら捉えられてきた。我々のグループが開発した大気圧のガス雰囲気で電子顕微鏡観察できる手法は、高い圧力が求められることにより、これまで困難だった水素吸蔵合過程をナノスケールで観察できた。水からの水素製造には種々の触媒が提案されているが、これらの反応の様子を動的に捉えることができれば、これまでシミュレーションなどで解明が試みられてきた活性発現メカニズムが詳細に解明されることが期待される。我々のグループは、これまでの知見を活かし、これまで不可能であった水素発生過程のナノスケール・その場観察を実現することで、反応メカニズムの詳細な解明や高効率な水素製造へ寄与する。

水素貯蔵・輸送媒体に関する技術

グラフェン金属クラスターの水素貯蔵

礒部 繁人
(北海道大学大学院 工学研究院材料科学専攻 特任助教)

バルクでは発現し得ない金属クラスター特有の機能は触媒化学などで注目され、今後ますます重要視されると予想される。しかし、金属クラスターの実験的研究は、計算によるアプローチに比べて数が少ない。これは、金属クラスターを保護材無しで単独に存在させることが困難であることが要因の一つに挙げられる。そこで、金属クラスターを何とか安定化できないかと第一原理計算で試算したところ、鉄クラスターがグラフェン上で安定に存在でき、その鉄クラスターは多量の水素を吸蔵し得ることを見出した。本研究では、金属クラスターがグラフェン上で比較的安定に保持されることを利用して、これまでは困難であった多角的な実験研究を系統的に実施し、グラフェン上に形成した金属クラスターの物理と化学に広く展開する。特に、クラスターの持つ水素貯蔵材料としてのポテンシャルを見極め、次世代のアトミックレベル水素貯蔵材料設計を切り拓いていく。

非貴金属-電子・プロトンプーリング有機骨格の協奏による水素発生システムの構築

張 浩徹
(中央大学 理工学部応用化学科 教授)

安定した水素エネルギーシステムを構築するためには、効率の良い水素の貯蔵/発生法の開発が必要である。現在水素キャリアとしてNH3やMCH等が検討されているが、その多くが貴金属触媒と熱源を必要としている。一方、水素社会の実現に向けては、蓄電池がそうであるように、多様な地域・ニーズ・コスト・エネルギースケールに適したキャリアおよび駆動法の開発も必要である。本研究では、室温で光により水素を発生するFe(II)と含π系ジアミンからなる分子 (Metal-bound π-diamine (MπA))の発見を足がかりに、Fe(II)に加え、Li(I)、 Mg(II)、 Ca(II)、 Mn(II)、 Co(II)、 Ni(II)等の非貴金属を含むMπAキャリアの開発を展開し、室温における光水素発生プロセスの開発に加え、可逆的な水素貯蔵ならびに既存キャリアに匹敵する水素貯蔵量を実現することを目的とする。
さらに、二電子・一プロトン貯蔵能を有するアミノフェノラート鉄錯体が示すMeOHからの室温における触媒的光水素発生反応を足がかりに、NH3、 NH2NH2、 MCH、 ROH、 H2O等の既存ハイドライドからの光脱水素化法の開発を展開する。これらの研究により、安価な金属と電子・プロトンプーリング能を有する有機骨格の協奏により駆動する新しいキャリアシステムを構築する。

CO2固定化技術

二酸化炭素還元に基づく光駆動型エネルギーキャリア生成-常温・常圧水素放出デバイスの創製

天尾 豊
(大阪市立大学 複合先端研究機構 教授)

二酸化炭素による地球温暖化現象は国際社会においても早急に解決すべき問題であり、二酸化炭素の排出を抑制するだけでなく、大気中の二酸化炭素を大幅に削減あるいは利用する技術、さらには太陽光エネルギーや水素エネルギーを効率的に利用する技術が必要となっている。
そこで本研究では、太陽光エネルギーを利用し、水と二酸化炭素から水素エネルギーキャリア分子となりうるギ酸を生成するための水の酸化に関与する光合成タンパク質およびギ酸脱水素酵素を多孔質ガラス基板内に封じ込めたエネルギーキャリア生成デバイスとギ酸を水素と二酸化炭素とに分解する反応を触媒する高分子分散型白金微粒子を多孔質ガラス基板内に封じ込め、常温・常圧で水素に変換するための水素生成デバイスとを連動させた「二酸化炭素還元に基づく太陽光駆動型エネルギーキャリア生成-常温・常圧水素製造デバイス」を構築する。本研究では新たに多孔質ガラス基板というデバイス材料を駆使し人工光合成系と生体触媒の機能を最大限利用し、従来の触媒反応を凌駕するような水素キャリア分子の合成と水素ガスの取り出しを常温常圧で可能とする革新的な二酸化炭素の固定と水素貯蔵と放出を可能にするものである。

窒素ドープグラフェン粉末を用いた新規CO2分離吸着材料の開発

近藤 剛弘
(筑波大学 数理物質系物質工学域 准教授)

本研究では窒素をドープしたグラフェン粉末を用いた新しい二酸化炭素分離吸着材料の開発を行う。炭素材料は常温常圧では二酸化炭素の吸着能を有さないが、窒素をドープすると二酸化炭素吸着能が生成することが知られている。最近、我々はピリジン型窒素と呼ばれる窒素種が、炭素材料への二酸化炭素吸着サイト形成に必要な窒素種であることを、モデル試料を用いた解析から明らかにした。
そこで本研究では炭素材料の中でも表面積が大きく扱いやすいグラフェン粉末に着目し、グラフェン粉末にドープするピリジン型窒素1つあたりにどれだけの二酸化炭素を吸着させることができ、最大でどれだけの吸着量を確保することができるかといった二酸化炭素吸着量に対する基礎的な知見や、どのような混合ガスにおいてどのくらいの分離選択性が得られるかなどの基礎的な知見を明らかにする。さらに、酸素種やボロンやヨウ素といった他のドーパントの導入によりグラフェンの電子状態の変調を行い二酸化炭素吸着特性や選択性への影響を明らかにし、グラフェンを基盤とした二酸化炭素吸着の基礎科学を確立する。これにより、最大効率かつ最高の選択性を持つ実用化に資する新しい二酸化炭素分離吸着材料の創製を目指す。

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