公益信託ENEOS水素基金

第11回研究助成金の贈呈/研究助成対象者一覧

第11回 研究助成金の贈呈

第11回 研究助成対象者一覧 (敬称略:所属・役職は研究テーマ採択時のもの)

水素製造技術

宮崎 晃平
(京都大学大学院 地球環境学堂 助教)

山田 裕介
(大阪市立大学大学院 工学研究科 化学生物系専攻 教授)

水素貯蔵・輸送に関する技術

藤田 健一
(京都大学大学院 人間・環境学研究科 相関環境学専攻 教授)

兵頭 健生
(長崎大学大学院 工学研究科 物質科学部門 准教授)

CO2固定化・削減技術

江 東林
(北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 環境・エネルギー領域 教授)

清水 研一
(北海道大学 触媒科学研究所 教授)

水素製造技術

固体ヒドロキシ伝導体を用いた新規アルカリ水電解の創出

宮崎 晃平
(京都大学大学院 地球環境学堂 助教)

水素は環境負荷の少ないエネルギー源として、大きく期待を集めているエネルギーキャリアである。様々な水素製造法の中で、電気エネルギーを水素の形で化学エネルギーに変換する水電解システムは、可動部分が少なく保守が容易であり、高い変換効率を誇る環境適合性に優れた水素製造技術である。特に、アルカリ水分解は、白金などの貴金属系の電極を使用する必要がなく、圧倒的なコスト低減が可能であるというメリットを有する。一方で、高電流密度の運転条件下において、槽電圧の急激な上昇が最大の問題点として挙げられる。そこで、本研究では、固体ヒドロキシ伝導体を電解質隔膜として機能させる新たな水電解システムの構築を目指す。固体ヒドロキシ伝導体は、無機固体材料でありながら、水酸化物イオン伝導性を有し、アルカリ燃料電池や金属-空気二次電池の電解質材料として機能する材料である。固体電解質の長所である高い安定性を活かしながら、高効率で水素製造を可能にする新たな水電解システムの構築を目指す。

メソ結晶内部の隣接間隙を利用した複合型光水素発生触媒

山田 裕介
(大阪市立大学大学院 工学研究科 化学生物系専攻 教授)

光触媒を用いると、光エネルギーを利用して水から水素を合成することができます。太陽光は、紫外光から赤外光まで、波長が異なる様々な光が合わさってできていますが、そのエネルギーの大半は可視光と呼ばれる我々の目に見える色の光により与えられます。そのため光触媒反応においては可視光を有効に利用することが重要です。可視光を効率よく利用して水素を発生させる方法として、光増感剤と呼ばれる有機分子に可視光を吸収させ、その蓄えられたエネルギーを使って水の酸化反応と還元反応を行う方法があります。通常、光増感剤は、自身では水の酸化反応や還元反応を行うことはできませんので、それぞれの反応に適した触媒と共に用いる必要があります。しかし、水の酸化反応と還元反応を行う触媒がそれぞれ自由に動き回れる状態で同時に使用すると、これらの間で反応が起こってしまい、水素を発生させることができません。お互いが接触するのを防ぐためには、担体と呼ばれる適当な物質上に固定化すればよいのですが、光増感剤が両者の間に入った形で触媒が近接していなければなりません。このような構造は、粒径が制御されたナノ粒子の集合体の内部に生じる間隙を利用すれば実現できます。本研究では、(1)光増感剤、(2)水素発生触媒(3)水の酸化触媒、の3つの化学種を効率的な電子移動が可能な形で配置・固定化し、可視光応答性に優れた複合型の水素発生光触媒を得ることを目的とします。

水素貯蔵・輸送に関する技術

水素の高度利用のための新しい有機ハイドライド貯蔵システムの開発

藤田 健一
(京都大学大学院 人間・環境学研究科 相関環境学専攻 教授)

水素を有機分子中に取り込む「有機ハイドライド」を活用する水素貯蔵は、気体で爆発性のある水素を安全かつ取り扱いの容易な「液体」状態での貯蔵・運搬を可能にし、液体燃料を取り扱うための既存の社会インフラを有効に利用できることから、その発展に期待が寄せられている。有機ハイドライドによる水素貯蔵を実用的技術として発展させるためには、有機分子中に貯蔵した水素を取り出すための高性能脱水素化触媒を開発すること、脱水素化と水素化を可逆的に繰り返し行っても変質しない有機ハイドライドを探索すること、という2点が重要である。本研究では、我々の従来の研究成果を基盤としてこれらの課題に取り組む。
具体的には、我々がこれまで取り組んできた、遷移金属と機能性配位子の協働に基づく有機分子の脱水素化錯体触媒に関する研究を発展させ、「機能性配位子を有する新しいイリジウム錯体触媒の開発」および「ジオールや環式アミン等の有機ハイドライド分子の探索」について検討する。
本研究で得られる成果は、有機金属化学をはじめとする学術領域の発展に寄与するとともに、環境やエネルギー分野を含めた工業界へもインパクトを与えると見込まれる。今後、低炭素社会への移行を進める中で、水素の高度利用に関わる技術開発は不可欠であり、本研究の成果がもたらす波及効果は多岐にわたると考えられ、人々の暮らしを支える社会システムの充実に貢献すると期待される。

酸素共存の影響を極限まで低減した高感度・高選択性水素モニタリングデバイスの設計手法の確立

兵頭 健生
(長崎大学大学院 工学研究科 物質科学部門 准教授)

H2を検知する固体デバイスとして、現在、半導体式や接触燃焼式などのガスセンサが実用化されている。これらは、通常の大気中で比較的高いH2感度と選択性を示すが、O2との反応を前提としたデバイスであるため、O2濃度が大きく変わる環境下ではH2濃度を正確に検知することは難しい。
本研究では、原子力発電所などのエネルギー施設やH2の製造・精製・貯蔵・輸送施設において切望されている「気相中のO2濃度の影響を極限まで抑えた高感度・高選択性H2モニタリングデバイス」を、陽極酸化チタニア膜と貴金属 (Pt and/or Pd) 電極を組み合わせた「ダイオード式ガスセンサ」で実現する。本センサは、貴金属表面でH2が解離吸着(および固溶)する際に「貴金属/酸化物インターフェースに形成されるショットキーバリアの障壁高さ」が大きく変化することで作動する。この貴金属表面に超微量のAuを修飾すると、気相中のO2濃度が変化してもH2感度に影響しづらくなる。そのAuの修飾状態が、電極表面での「H2の解離吸着特性」や電極バルク中の「水素吸蔵量」に与える影響を解明しながら、作動温度や湿度、他ガスに対する影響を組成・構造最適化により低減することで、O2濃度が0~数十%と大きく変化してもサブppm~1%程度のH2を高感度・高選択的に検知可能な高性能H2センサの設計手法を確立する。

CO2固定化・削減技術

テーラーメード多孔性高分子を用いたCO2の分離回収と固定化

江 東林
(北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 環境・エネルギー領域 教授)

二酸化炭素は、地球温暖化にもっとも大きな影響を及ぼす温室効果ガスである。現行技術では、特殊な試薬を水に溶かした溶液を用いて二酸化炭素の吸着・回収が行われているが、それにかかるエネルギーが火力発電所の場合、生産した電気エネルギーの40%も占め、効率的な二酸化炭素の回収はできていないのが現状である。
本研究は、効率的に二酸化炭素を回収できる固相システムを開発する。具体的に、優れた吸着・分離能を有するテーラーメード多孔性高分子固体材料を開発し、特に、高吸着容量・高選択性を兼備する多孔性高分子を創出し、省エネルギーで再生可能な多孔性固体材料を開拓する。これらの固体材料を充填剤としてカラムに装着し、二酸化炭素の吸着、分離、回収および脱着・再生について検討し、火力発電所や車などの各種排ガスおよび大気中の二酸化炭素の分離・回収能の評価を行い、各種排ガスの分離・回収に適した多孔材料を創出する。

二酸化炭素の水素化を鍵反応とする汎用・機能化学品一段合成に有効な機能複合型固体触媒の開発

清水 研一
(北海道大学 触媒科学研究所 教授)

脱石油資源、CO2排出抑制の観点から、CO2を原料とする物質合成が求められている。本研究では、CO2の水素化と結合形成反応を同一反応器内・同一触媒で行い、様々な化学品を高選択的に合成することを目的とする。具体的には、(1)CO2/H2混合ガスによるアミン及びアンモニアのメチル化(メチルアミン類合成)、(2) CO2/H2混合ガスによるベンゼンのメチル化(トルエン合成)、(3) CO2/H2混合ガスとオレフィンからのアルコール合成の3反応を高選択的に進行させる固体触媒を開発する。本研究の成果は現行のメタノールや合成ガス(CO/H2ガス)を用いる多工程の製造プロセスに比べ、コスト・エネルギー・CO2排出量の全てを削減可能な化学品製造法として応用可能である。反応(1)ではNH3を用いたCO2吸収法(CCS)により火力発電施設等で回収された炭酸アンモニウムをCO2源料・NH3源料に用いることで、CO2濃縮コストの低減も期待できる。触媒候補としては、本研究室で研究してきた担持金属ナノ粒子触媒を用いる。金属のサイズ・酸化状態と担体酸化物のLewis酸性を最適制御することにより、水素化、結合形成の各過程に対する触媒作用を最適化した機能複合型触媒を開発する。さらに、基礎研究により触媒を改良するための指針を確立し、触媒性能の向上を試みる。

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