燃料研究

高性能な軽油脱硫触媒の開発

サルファフリー軽油

ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる窒素化合物(NOX)や粒子状物質(Particulate Matter)は環境汚染を引き起こすことから、自動車などは、これら有害物質を除去するための排ガス浄化装置を備えています。しかしこの装置は燃料中の硫黄分に悪影響を受けることから、自動車用のディーゼル軽油では、硫黄分が厳しく規制されています。
日本では2007年より、軽油中の硫黄分含有量は10ppm以下に義務化されており、これをサルファフリー軽油と呼んでいます。

サルファフリー軽油の製造技術

図1 水素化脱硫反応による硫黄分の除去

サルファフリー軽油の主原料は、原油を蒸留分離して得られる直留軽油(概ねの沸点範囲260~360℃)ですが、直留軽油中には硫黄分が1~2%程度含まれます。硫黄分を10ppm以下に低減させるため、製油所では、軽油を水素と共存させ高圧条件下で触媒を用いた反応を行っています(水素化脱硫;図1)。なお、水素化脱硫は軽油に限らず多くの燃料で行われています。

軽油脱硫の難しさ

図2 ジベンゾチオフェン誘導体の構造と脱硫反応性

硫黄分は、様々な分子構造を持った有機硫黄化合物として存在しています。軽油中の硫黄化合物では、ジベンゾチオフェンを基本骨格とした化合物(ジベンゾチオフェン誘導体)が代表的です。これらの化合物は、その構造によって脱硫反応性が大きく異なることが知られています。図2に示すジベンゾチオフェン誘導体のうち、4,6-位に置換基をもつ化合物群は最も反応しにくく、サルファフリーを満足させるためには、このような硫黄化合物まで除去させる必要があります。

高活性化が求められる脱硫触媒

さらに原料軽油中には、触媒の反応性を低下させる窒素分や芳香族分も含まれており、その濃度は原料により異なります。原油の多様化などに対応するためにも、高性能な脱硫触媒が今も求められています。

触媒開発のポイント

脱硫触媒の主体となる活性点は硫化モリブデンであり、アルミナなどの高表面積担体上に高分散担持されています。硫化モリブデンは、硫黄(S)、モリブデン(Mo)、硫黄(S)の順の層状構造をなしています(図3)。硫化された触媒を透過型電子顕微鏡で観察すると、モリブデン層を確認することができます(写真4)。このように存在する活性金属を数多く形成させることが、脱硫活性を向上させる鍵であると考えられます。また、一度反応装置に充填された触媒は長期間使用されるため、触媒には高い活性と同時に活性の安定性も求められます。

図3 触媒上での硫化モリブデンの構造
写真4 透過型電子顕微鏡でみた脱硫触媒

触媒開発と製油所への展開

当社では、硫化モリブデンの粒子径を10nm以下にまで微粒子化可能で、かつ数多くの活性点を形成できる特殊な手法を見出し、触媒の高活性化に成功しています。
当社ではこれまで数多くの軽油脱硫触媒の実用化に成功しています。2011年に実用化した軽油脱硫触媒ではサルファフリー軽油の生産性向上に貢献した実績が認められ、この触媒開発に関する技術は、平成26年度の石油学会技術進歩賞および平成28年度の触媒学会賞(技術部門)を受賞しています。

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