潤滑油研究

環境にやさしい省エネグリース

グリース

グリースは、自動車の各種部品や、工業用機械などの各装置に用いられ、軸受の円滑な運動に大きな役割を持ち、グリースの存在をなくしては装置が動かないと言っても過言ではありません。
近年の社会全体の省エネ志向から、グリースにおいても省エネ効果のあるグリースが求められています。

省エネグリースのコンセプト

スポンジのように油を保持
図:増ちょう剤の電子顕微鏡画像

グリースは、通常の潤滑油と異なり、基油と添加剤、これらを保持する増ちょう剤の大きく3つの成分で構成されています。
増ちょう剤は電子顕微鏡で見ると、繊維が網目状に絡み合った形をしており、スポンジのように油を保持します。グリースによる省エネ実現にはこの3成分の配合の最適化が必要となります。

図:省エネグリースの設計(ストライベック曲線)

省エネグリースの設計は以下の通りになります。
グリースによる省エネは、摩擦係数の低減により効果が得られます。図の潤滑状態と摩擦係数を表すストライベック曲線において、油膜が介在する流体潤滑領域では、基油の低粘度化、低摩擦化により撹拌抵抗と損失トルクの低減を図ることが重要です。また、油膜が破断し金属接触が起こる境界潤滑および混合潤滑領域では、増ちょう剤と添加剤の最適化により摩擦、摩耗の低減を図ることが重要となります。

また、軸受内のグリース分布状態による抵抗の違いについても考慮する必要があります。図に示すように、軸受内では転動体が通るとグリースが押しのけられ通り道となる空間ができますが、転動体が通った後にグリースが再び通り道を塞いでしまうチャーニングと呼ばれる状態では、転動体がグリースをかき分けて進むため回転抵抗が大きくなります。一方で、チャンネリングと呼ばれる状態では、通り道が塞がらずに回転抵抗が少ないことから、省エネグリースとしては、チャンネリング状態に適切に移行することが望ましく、そのためには起動初期に適度な硬さを有することや、流動しすぎず、その場に留まる性質を持つことが必要です。


グリース特有の流動特性に基づく考え方(転がり軸受内での流動)

図:軸受内部のグリースの挙動(チャーニング、チャンネリング)

省エネルギーグリース「タフリックスグリースMP2」の開発

私たちは、グリースの3大成分を最適化し、省エネを実現するグリース「タフリックスグリースMP2」(以下、「タフリックスMP2」と表記)を開発しました。
基油にはすべり抵抗低減のための低粘度基油、また、増ちょう剤にはグリース流動抑制による転がり抵抗低減のリチウムコンプレックス、添加剤にはすべり抵抗低減のモリブデン系摩擦低減剤を適用しています。

タフリックスMP2の流動特性

タフリックスMP2は張り付き性に優れるため、グリースの飛散を抑制することが可能です。この性能は、軸受内におけるグリースの挙動として、早期にチャンネリング状態になっており、玉軸受のボールの通り道が確保され、抵抗が少ない状態が維持されています。

回転板に評価グリースを一定量置き、回転板を室温で、400rpmで30分間回転させグリースの飛散状況を確認
左:他社品、右:タフリックスMP2

タフリックスMP2の省エネ特性

図:グリースの省エネ性試験装置

図に示す試験装置を用いて,モータで消費される電力量および軸受内部の温度を測定する実験を行っています。消費電力量は最大11%低減し、軸受部の温度上昇を最大10℃抑制する効果が確認されており、省エネ性において非常に優れている結果が得られています。

省エネグリースの適用箇所

タフリックスMP2は、あらゆる設備に適用可能で、表に示す各種設備、潤滑箇所では、省エネ効果・消費電力量の削減や軸受の温度上昇の抑制により、各種設備や車両等の高効率化や保全作業の軽減に有効です。
また、増ちょう剤として、温度変化や水分混入に強いリチウムコンプレックスを適用している、極圧性、耐熱性、耐水性、長寿命などのあらゆる性能を兼ね備えた万能タイプのグリースです。

設備 潤滑箇所
適用箇所 建設機械
農業機械
エンジン周辺、ホイール、プロペラシャフト、ダンパー、旋回装置、べダルなど
鉄道 車軸、主電動機など
産業機械 圧延機ロール、連続鋳造設備、焼結設備、パレット台車、クレーン、荷揚げ設備など
工作機械、電動機モーター、直動装置、減速機、真空ポンプ、コンプレッサー、チェーン、ロボット、ファンなど
家電 掃除機、洗濯機、エアコン、換気扇、複写機など

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