研究者インタビュー ENEOSの花、咲かそう!

STORY 08 ビタミンB12

STORY 08 ビタミンB12 開発STORY 微生物が働ける環境を整えるのも、研究者の仕事です
中央技術研究所 平澤和明

まるで微生物と語らうように大切に育てている平澤さん。微生物への思いやりが、バイオの分野での多くの成果に結びついたに違いありません。そんな平澤さんには「思いやり」が花言葉のチューリップを選んでもらいました。

Introduction

「目の疲れをとる赤い色をした目薬」を見たことはありませんか? この赤い色は、ビタミンB12の色なのです。日本で初めて、このビタミンB12の商業化に成功したのが当社でした。このように、バイオの分野でも独自のアイディアで確固たるポジションを確立しているJXTGエネルギー。ここでは実際にビタミンB12を開発した平澤さんに、研究の醍醐味やバイオとエネルギーの未来を語ってもらいました。

独自のアイディアで、バイオ研究を事業に

石油会社でバイオとは意外ですね。

確かに少し違和感を持つかもしれません。ただ、当社とバイオの関係は長く、石油から飼料を作ろうという気運が盛り上がっていた1970年代には既に「石油たんぱく」という形で研究がおこなわれていました。当時は、その後に起こった石油ショックや石油から出来た飼料への抵抗感から成果を上げるには至りませんでしたが研究だけは連綿と続いており、そのノウハウが現在の研究にも活かされています。

具体的にはどんな研究なのですか?

私が入社後に手がけたのはビタミンB12の生産ですね。このビタミンは血液を造るのを助けたりするのですが、人間の身体では造り出すことができません。また構造が複雑なため化学合成で造ることも難しいので、微生物の発酵によって生産しています。B12の発酵に適した菌があれば生産速度も速まるため、より生産性の高い菌を探す必要があります。そのためには、何万、何十万とある菌を先ず培養しなければなりません。培養にかかる時間は短縮できませんから、一度に出来るだけ多くの菌を培養して選別するノウハウが求められるわけです。そこで試行錯誤の末、寒天培地の上にコロニーを作らせ、1個1個の菌の生産性を簡単に見分ける方法を開発しました。ちょっとした細工をしただけなのですが、この方法は誰も試していなかった。この方法のおかげで、菌の選別効率が一気にアップしたのです。このような、誰も思いつかなかったアイディアを見つけたときの「ワクワク感」が研究者にとっての喜びですね。

発想が大事ということですね。

そうですね。結果として非常に単純なアイディアでも、思いつかなければ形にはなりません。ですから研究中は培養液を見ながら、一日中考えていることもありました。けれどもそうした努力が実り、それまですべて輸入に頼っていたビタミンB12を国内で初めて商業化することができました。現在ではその高純度、高品質で国内だけでなく海外からも指名されるまでになっています。そしてここで培った研究ノウハウは、次のテーマだった「アスタキサンチンの開発」につながりました。これは赤色の飼料添加物で、サケの養殖に用いられます。天然のサケは自然界のアスタキサンチンを食べてその肉が赤くなりますが、養殖のサケでは同様な色調を得るために餌にアスタキサンチンを混ぜてやる必要があります。総合エネルギー企業の当社にとってバイオの研究開発は異端かもしれませんが、小さいながら事業の柱の一つにまで成長しています。

バイオの活躍フィールド拡大に貢献したい

そんな平澤さんの研究者としての原点は?

子どもの頃は昆虫を採集し飼育することが大好きな少年でした。また大学時代は農芸化学科で、活性物質を明らかにするために蜂の毒を集めるといったことも行っていました。地道にコツコツと微生物を探し、時間をかけて育てるという現在の研究スタイルは、こうして培われたものだと思います。微生物は本当に真面目に働いてくれます。実験はある程度の予測を立てて行うものですが、微生物が予想通りの働きをしないときは私の理解が足りなかったのだと思い、彼らが気持ちよく働ける環境を整えることを考えるようにしています。

今後もバイオの分野で研究を続けるのですね。

ただ、その研究成果を活かすフィールドをどこに求めるかは状況により考えていきたい。今後も現在のように飼料・食品などの分野に応用することは、もちろん考えられます。けれどもバイオの研究フィールドはボーダーレスになっています。クルマの燃料としてバイオマスに注目が集まっているように、今後はエネルギー分野にアプローチをすることだって、もちろんあるでしょう。化学品を発酵でつくることも可能でしょうし、環境浄化にもバイオ技術が役に立ちます。こうした研究成果を活かすフィールドの拡大と同時に、もう一つ目を向けなければならないことがあります。それは、日本だけでなく世界を相手に研究を行うことです。ビタミンB12は高純度、高品質という点で世界でナンバー1の方法で作ることに成功したと思っています。これからも、世界が必要とするものを、世界一の方法で作っていきたい。企業ですから利益を追求するわけですが、私たちが今行っていることは、当社の利益になると同時に社会に対しても非常に有益なものであると思っています。

気分転換にどんなことをしていますか?

今はこの分野で大きな成功を収めるための研究を続ける毎日で、定年後に何をしようかなんて考えたこともありません。気分転換は昼休みと通勤電車での睡眠。オフの日は息子とキャッチボールをすることもあります。ボールがあっち行ったりこっち行ったりでいい運動になるんです。

ビタミンB12

悪性貧血、末梢神経障害の治療薬や眼精疲労回復に効く目薬などに使用されるビタミンB12。当社では長年の研究の結果、独自の発酵・分離精製工程を開発し、全量輸入に頼っていたビタミンB12の商業化に国内で初めて成功しました。

ビタミンB12立体構造
ビタミンB12立体構造
ビタミンB12結晶顕微鏡写真
ビタミンB12結晶顕微鏡写真

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