研究者インタビュー ENEOSの花、咲かそう!

STORY 09 MQL加工用切削油

STORY 09 MQL加工用切削油 開発STORY 「油量を減らす」逆転の発想が、成功の要因に
中央技術研究所 須田聡

大振りな花のもつ雰囲気が、須田さんにピッタリのラナンキュラス。「光輝を放つ」という花言葉は、潤滑油の分野において独自の発想で「キラリと光る」新製品を生みだした、須田さん自身を表現しているようです。

Introduction

ガソリンやエンジンオイルで知られるJXTGエネルギーですが、金属加工などに用いられる潤滑油の分野にも多くの製品を供給しています。今回は、専業メーカーが主流だった切削油の分野に果敢に挑戦した開発STORYをご紹介。「ごく僅かな量の油しか使用しない切削油」という他に類を見ない製品を開発し、現在では大きな夢を抱かせる商品に育てた須田さんにお話を聞きました。

クルマへの興味から、燃料となる石油メーカーを選択

どんな理由で当社を選ばれたのですか?

大学では工業化学を専攻しており、将来は研究職に就きたいと思っていました。その一方で、趣味で自動車ラリーに参加するなどクルマに対する興味が高かったのです。クルマで化学の知識を活かせる場所は燃料関連だと思い、当社に入社しました。入社直後はカーエアコンなどに使用されるエアコン用潤滑油の研究開発を担当していました。当時「高性能」という考え方は浸透していましたが、環境への配慮した商品を作ることへの意識はまだあまり高くはありませんでした。私は高性能と環境への配慮の双方を考えるようになった、最初の世代だと思います。そこで性能と環境を両立させた潤滑油を作ったわけですが、その後異動になったのが、金属などを加工する切削油を開発する、現在の金属加工油チームです。エアコン用潤滑油では新たな発想で開発したと自負していたこともあり、異動直後は既に完成している製品を改善する作業に、あまり魅力を感じていなかったのも事実です。

そこで何らかの気持ちの切り換えがあったんですね。

そうなんです。「自分がここに呼ばれたということは、これまで培ってきたノウハウをここで活かせということなのだ」と思うようになりました。当社はガソリンやエンジンオイルの分野では業界をリードする立場にありますが、切削油は専業メーカーが主流だったのです。そこで他社が開発していないような、独創的な油を作ろうと考えました。そして出会ったのが、切削時の油量を減らすというアイディアでした。油の飛び散った町工場をニュースなどでも見たことがあると思いますが、あれは金属を切るときに大量の油を流すことに原因があります。切削油は、製品の表面をきれいに整えると同時に熱を抑え、刃を保護しているのです。その性能を維持しつつ、油量を抑えることが出来れば新たな市場が開拓できると思いました。そして完成したのが、MQL(Minimal Quantity Lubrication)加工用切削油です。MQLとは「ごくわずかな量」を意味しており、これまでの0.01%以下の油量で切削が可能になりました。

「使用する油量を減らす」とは思い切ったアイディアですね。

実際、開発のゴーサインが出るまでには「オイルメーカーが少量の油で済む切削油を作るのは、自分の仕事を減らしているようなものではないか」という意見もありました。ただ、我々は切削油の分野では挑戦者ですし、それで販路が拡大するなら会社にとってもメリットがあると説明しました。また、量産主義だったバブル期が終焉を迎え、エコロジーに注目が集まっていた時期だったことも追い風になったと思います。ここでも、高効率と環境の両立を実現できたのです。

次の世代に伝えていきたい、ものづくりの楽しさ

開発までには苦労されたのではないでしょうか。

根本的な部分で、私は化学屋であって機械屋ではなかったので、まずそこで苦労しましたね。幸い前任者が大学で教鞭を執っていたので、そことのコラボレーションという形態で研究を進めつつ、私自身も勉強を重ね、最終的には学位(工学博士)を取得するまでに至りました。この前任者以外にも、多くの人の協力があったからこそ実現できた製品です。当社にはいろんな知識や経験を持つ人がおり、彼らと話をしていく中で、様々なアイディアも生まれました。今でも覚えているのは、私が新入社員の頃に一緒に働いていた先輩社員たちの「先を見る目」ですね。今行っている研究の少し先であれば、誰にでも見えるわけです。ただ、もっと広い視野で先を見越すことが、研究では求められるのです。

この成果をどのように活かしていきたいですか?

先程もお話ししたとおり、当社はガソリンやエンジンオイルの分野では実績を残しています。一方、切削油の分野では、MQL加工油を中心に一定の評価を得るにとどまっております。しかしながら、当社は、エンジン内で燃焼させるオイルと、エンジンを作るためのオイル(切削油)の双方を手がけているわけです。どちらでも高品質のオイルを手がけているメリットを、もっと活かしてみたいですね。両方の品質を極めれば、いったいどんな製品が生まれてくるのかと考えるだけでワクワクします。そうした意味からも、今は「ものづくり」に非常に関心を持っています。

平日は研究に没頭するため、休日はどんな風に過ごされますか?

リフレッシュするためにも週に2回は水泳にいくようにしています。泳いでいると頭の中が真っ白になるんですね。それと、子どもたちにものづくりの楽しさを伝えたいと思い、地道な活動ではありますが、地元で科学の楽しさを伝えるような集まりに参加しております。私も子どもの頃にリトマス試験紙の色の変化に興味を持ったり、プラモデルに改造を加えて速く走らせるようにしたりしたことが、今の仕事につながる原体験になっていると思っています。子供はやっぱり、テレビゲームではなくてプラモデル作りが基本ですよ。(笑)

MQL加工用切削油

金属加工の際に必要となるのが、加工用の切削油です。従来の切削油は大量に使用されるため、廃油の処理や作業環境に少なからず問題がありました。そうした課題を克服したのが、MQL(Minimal Quantity Lubrication)加工用切削油。ごく微量でも効果的に作用する切削油を開発したことで、生産効率の向上と使用油量削減の両立を実現しました。

普通の加工

普通の加工
大量の切削油(約100~1000L/h)で
“潤滑”,“切りくず排出”,“冷却”

MQL加工

MQL加工
極微量の切削油(数~数十mL/h)で“潤滑”、
圧縮空気で“切りくず排出”と“冷却”
→作業環境が良好

MQL加工導入の環境改善効果

MQL加工導入の環境改善効果
*鳥居元,他.”マツダ技報,No.21,P138-145 (2003)

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