研究者インタビュー ENEOSの花、咲かそう!

STORY 16 さび止め油

STORY 16 さび止め油 開発STORY   「水と油」を高次元で調和させる逆転の発想が画期的新製品を生む
中央技術研究所 本山忠昭

需要家のニーズに応える他にはない新製品の誕生を支えたのは、本山さんの情熱と、さび止め油に対する強い思い入れでしょう。
「私は燃えている」という花言葉のポインセチアが、その心を表現しています。

Introduction

「水と油」。相反する性質の形容として使われるこの言葉が、本山さんが開発を担当した新さび止め油のひとつのキーポイントとなりました。当社では、バリウム系添加剤を添加しないさび止め油の新シリーズ「アンチラストテラミ」を2009年4月に発売。9月に発売したシリーズ4品目は、従来、両立ができなかった指紋除去と長期さび止めという2つの性能を兼ね備えた画期的な製品です。その開発の経緯やポイントについてうかがいました。

  • バリウム系添加剤
    多くのさび止め油に使用されている添加剤。人への有害性は指摘されていないが、海外では排水中のバリウム濃度規制が定められている国・地域がある。

指紋除去、長期さび止めの2つの工程をひとつにする製品

さび止め油とは、どういうものですか?

文字通り鉄鋼製品のさび止め対策に使われる油のことです。例えば、自動車部品を構成する軸受や歯車などに使われます。さび発生の対策には年間600億円以上も費やされておりますので非常に重要な役目を担った製品です。私は入社以来、さび止め油の研究開発を担当していて、新シリーズ「アンチラストテラミ」の開発にも携わることになりました。シリーズ4品目の製品となった「LS-F」は、従来とは違った発想から開発を進めました。

開発の経緯についてお聞かせください。

他の工業製品同様、さび止め油にもJIS規格があります。したがって、さび止め油を開発する際にはJIS規格に合格することがひとつの目標であり基準になっています。しかしこのような規格品や相当品は競合他社においても多く発売されておりますのでこれでは競争力がありません。他社との優位性を確保するには、付加価値が必要なのです。そこで私どもでは、需要家のニーズに着目しました。需要家に喜んでいただけるような付加価値の高い製品を作る――。このようなアプローチが、新製品開発の出発点となりました。需要家のニーズを想定するうえでは、さび止め油が使われる工程と、いまの世の中の流れを考えました。例えば自動車の部品を製造する工場では、製造工程の中に部品に付着してしまった塩化物(指紋の成分など)を洗浄・除去する工程があります。塩化物はさび発生の大きな要因のひとつになるからです。そのうえで長期さび止め用の油剤を塗油して出荷する、という工程が一般的です。他方、世の中の流れを考えると、効率アップや省エネといったニーズが間違いなく存在します。これらを勘案して、指紋除去と長期さび止めの2つの工程を1つにすることはできないか、という発想が生まれました。それを実現したのが新製品「LS-F」です。1つのさび止め油に、指紋除去と長期さび止めという2つの性能を持たせることで、従来必要だった2つの工程を1つの工程にすることが可能になりました。

開発のポイントとなったのはどのような点ですか?

指紋を除去するさび止め油では、指紋を効率よく除去するために、少量の水分を添加します。長期のさび止め油は、大気中の腐食性因子から金属表面を護るために、カルシウムなどの金属系さび止め剤を添加します。しかし、この2つを単純に組み合わせると、水分によって金属系のさび止め剤が凝集・沈殿してしまい、さび止め性能を発揮できなくなるんですね。そこで「LS-F」では、指紋除去のための水分を多くかつ安定的に含有し、その水分がさびの発生に影響を与えないようにしました。同時に、長期さび止め剤も金属元素を含まないものを採用しました。この2点によって指紋除去と長期さび止めという2つの性能を高いレベルで両立させることに成功しました。これは他社にはない製品で、社内では画期的といってくれる方もいます。10年以上さび止め油に携わってきた私が、これほど脚光を浴びたのも初めてですから(笑)。

新入社員という「新しい血液」の循環でより活性化

これからJXTGエネルギーに入社する後輩たちへメッセージを。

最近は若い社員も増えてきましたが、当社の平均年齢はまだまだ高いように感じます。したがって現状では、経験・知識・技術は十分にあると思いますが、その反面では考え方に固執してしまうのも事実ではないでしょうか?これから入社される皆さんには新しい発想や異分野における知識・技術という「新しい血液」を会社という身体の隅々に送り出し、循環させてほしいと思っています。同様に、さまざまな人も「血液」を送り出しており、自分にもまた新しい発想や技術として巡って来ますから、それを吸収することで自分のスキルをさらに磨いていく。これは、新入社員の皆さんはもちろん、私たちにも良い影響を与えてくれるのではないでしょうか。

オフの日にはどんなことをされていますか?

最近の楽しみはランチツーリングですね。私が大型、妻が小型のバイクに乗って、「あそこのインドカレーがおいしそう」とか「パスタにしようか」なんて、おいしいお店を巡っています。共通の趣味があるのはいいですよね。仕事は忙しいけれど、週末にはランチツーリングに行くんだと思うと、研究ももっと頑張れますね。

最後に、さび止め油に対する今後の取り組みについて教えてください。

さび止め油というのは、「鉄鋼製品」がこの世にある以上、絶対になくならないものです。環境を配慮して作られた「アンチラストテラミ」シリーズは、現在4品目。近い将来には10品目程度でフルラインナップにしたいと考えていますし、その完成がひとつの区切りにもなります。さび止め油って、本当に面白い。情が移っている、という感じがします。これからも「LS-F」のように、需要家にメリットのある製品をどんどん開発・提供していきたいですね。

環境配慮型さび止め油 ~アンチラストテラミLS-Fについて~

アンチラストテラミLS-Fはバリウムを含有しない環境に配慮した商品でありながら、「指紋除去性」と「長期間のさび止め性」のふたつを兼ね備えた商品です。これにより、機械部品などの製造工程を削減できるメリットがあります。

アンチラストテラミLS-F

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