研究者インタビュー ENEOSの花、咲かそう!

STORY 21 明るさ倍増フィルム

STORY 21 明るさ倍増フィルム 開発STORY   大学時代の経験を活かし、有機EL照明の明るさを倍増させる新たな技術を開発
中央技術研究所 髙橋麻登香

ひまわりの花言葉は「光輝」。髙橋さんが開発を担った新技術は、文字通り、有機EL照明の明るさを倍増させるとともに、光り輝く研究成果として次世代照明の未来を明るく照らしています。

Introduction

次世代照明のひとつとして注目されながら、一般にはまだ普及していない有機EL照明。その大きな理由のひとつが、有機ELのガラス内部に光が閉じ込められてしまい、発光した光の約20%しか外に出ることができない点にあります。こうした課題に対して当社は、有機ELの内部に閉じ込められた光を外に出すフィルムを開発し、外に届く光の量を倍増させることに成功。同じ使用電力で有機ELの光を明るくできるため、照明分野における省エネに貢献する技術として期待されています。髙橋さんは、大学時代の研究経験もフルに活かし、その技術開発の一翼を担っています。

できないと思っていたことが成功し感動

有機EL照明とはどのようなものですか?

有機EL照明は、蛍光灯に代わる次世代照明として、LEDとともに期待されている照明です。LEDが点で光るのに対して、有機EL照明は面で光るのが大きな特長です。さらに、形状が薄くて曲げることができるので、デザイン性のある新しいタイプの照明もできるのではと期待されています。ただし、LEDが一般に普及しているのに対して、有機EL照明は、発光した光が内部に閉じ込められしまい、現状では省エネ性が低いため、まだ普及していません。

有機EL照明の課題に対してどのような技術を開発されたのですか?

有機EL照明は、有機物でできた層を重ね、陽極と陰極ではさんで電圧をかけることによって発光します。このとき、発光層から発光した光が陽極の層や基板の内部で全反射し、光が閉じ込められてしまうんです。その結果、せっかく発光した光の約20%しか外に届けられません。そこで私たちの研究では、ナノメートル構造の凹凸のある「凹凸形成層」を組み込み、反射を繰り返して外に出られなかった光を外に出られるようにしました。この技術開発により、外に届く光を、従来の20%から40%へと倍増することができました。
凹凸構造を作るための工程には、「元型」「金型」「フィルム連続転写」「ガラス連続転写」の4工程があります。まず元型を作り、それを金型に起こし、凹凸をフィルムに転写し、さらにガラスに転写します。このうち私が開発を担当した「ガラス連続転写」は、ガラスの表面に凹凸を連続して大量に作る、これまでにない新しい技術です。ガラスは堅いものなので、凹凸構造を押しつけて作るための装置は非常に高価だったり、1回押しつけるのに時間がかかったりといった問題がありました。新たに開発したガラス連続転写では、ガラスの上に材料を塗り、型をローラーでころころ転がすことによって連続して大量に作ります。これにより、安価に効率よく、大面積のものにも凹凸が作れるようになりました。

どのような経緯で開発されたのですか?

当初はフィルム連続転写のフィルムをお客さまに提供しようと考えていましたが、お客様によっては、フィルムでは耐熱性に問題があり、「もっと熱に強い材料でつくってもらえないか」との要望をいただいたことがきっかけとなって開発がスタートしました。新技術はもともと上司のアイデアでしたが、たまたま私が大学時代にガラス素材に関する研究を専攻しており、素材についてよく知っていたので研究も順調に進み、着手からコンセプト確認サンプルの完成まで2週間ほどでした。私自身、堅いガラスに押しつけて凹凸を付けるのはできないのではと疑っていただけに、最初にできたときには、あ、できるんだ!と感動しましたね。その後は、スケールアップしたり、課題を改善したりと、実用化に向けて開発を継続しています。

幼い頃の夢をかなえて研究者に

研究者をめざそうと思ったきっかけは?

小さい頃から自然科学には興味がありました。5歳の頃、子ども向けの教育番組を見ていて、石油があと40~50年でなくなるという話を聞いて、「私は50歳まで生きられないんだ!」と大泣きした覚えがあり、地球は大事にしなきゃいけない、石油も節約して使わなきゃいけないという意識が芽生えました。小学生の頃には、部屋の電気をこまめに消したり、水を節約したり。電気を消し忘れた家族に「つけっぱなしだよ」なんて指摘もしていましたね。
入社にあたっては、石油代替の新しいエネルギーの開発に真摯に本気で取り組んでいること、エネルギー問題の解決のための研究に携われることに引かれました。いま考えると、5歳の頃からの想いや夢が、現在につながっているように思います。

今後、研究者として果たしたい役割と夢についてお聞かせください。

QOL(Quality of Life)の向上につながる研究で社会に貢献したいなと思っています。例えば、有機EL照明のように、やわらかい光で、身体にも精神的にもやさしく、人が心地よく暮らせるような製品を開発できたらいいなと思っています。夢としては、いま行っている研究を世の中に製品として送り出すことですね。今回の研究では上司のアイデアをもとに開発を進めましたが、いずれは自分のオリジナルアイデアを出し、それをもとに生まれた製品を世の中に送り出せたらいいなとも思います。

これからJXTGエネルギーに入社する後輩たちへメッセージを。

いま、自分がやっていることが、どのように形になるのか。これが形になったら、世の中がこう変わり、こんな風に楽しくなる。そんなことをいつも想像し、それを自分が実現するんだという意欲やモチベーションを持って仕事に取り組むと、研究は本当におもしろいですし、感動も大きくなると思います。自分がやっていることが実現したときのことをイメージしながら、ぜひ取り組んでください。私自身も、いまやっていることが製品として世の中に出ると、こう便利になるだろうな、豊かになるだろうなとか、人が笑顔になるんじゃないかな、といったことを思い描きながら研究に取り組んでいます。

明るさ倍増フィルム

有機ELの内部に閉じ込められた光を外に出すフィルムを開発し、外に届く光の量を倍増させることに成功。

明るさ倍増フィルム

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