研究者インタビュー ENEOSの花、咲かそう!

STORY 22 膜分離技術開発(水素製造・精製技術開発)

STORY 22 膜分離技術開発(水素製造・精製技術開発) 開発STORY   燃料電池車用水素を効率的に回収する独自の技術を開発
中央技術研究所 前川俊輔

人には柔らかく、芯はしっかりしている「外柔内剛」でありたいという前川さん。言葉の端々にエネルギーに対する芯の強い想いが感じられ、サンタンカの花言葉「熱き思い」と相通じるところがあります。

Introduction

温暖化抑制に向けて、水素で動く燃料電池車への期待が高まっています。しかし、太陽光などの再生可能エネルギーで水素を製造することは技術的にハードルが高く、水素の早期普及には既存設備で化石燃料から製造することが必要です。一方、燃料電池車で利用される水素は不純物がなく高純度であることが求められ、既存設備を用いた場合、高純度水素の量は低下するという課題があります。そこで当社では、従来の技術よりも効率よく純度の高い水素を精製できる、ハイブリッド分離膜型水素精製装置を開発しました。前川さんは分離膜の研究に携わり、商業化に向けて研究開発を加速させています。

従来にない技術の開発におもしろみとやりがい

どのような研究を行っていますか?

燃料電池車のための水素を作る技術の開発を行っています。燃料電池車用の水素というのは、不純物がなく高純度であることが求められます。当社には、以前から水素を製造・精製する技術があり、これを利用して高純度水素を作ることもできますが、得られる水素の量が大幅に低下してしまいます。製造する水素を100とすると、精製して回収できる高純度水素は70くらいでしょうか。近い将来、水素で動く燃料電池車が普及して水素が大量に必要になったときに、既存技術だけではビジネスとして成り立たないことも考えられます。そのため、純度の高い水素を、より効率的に取り出す技術として、膜分離技術を使った研究開発を進めています。

膜分離技術とはどのようなものですか?

製油所で作られる水素に含まれている不純物の大半は二酸化炭素(CO2)です。既存設備では吸着法を用い、水素以外の不純物を圧力で吸着させて、水素と、二酸化炭素などほかの物質に分けています。一方、私たちが開発したハイブリッド分離膜型は、水素だけを通す膜でまず水素を取り出し、通らなかったガスをCO2分離膜に通して二酸化炭素を取り出します。さらに通らなかったガスは二酸化炭素が抜けたことで水素の割合が増えるため、再び水素分離膜に通すと初めに回収できなかった水素を回収できる、といった仕組みです。こうして水素分離膜とCO2分離膜を交互に数段階にわたって通すことで、CO2を高濃度で回収しつつ、より多くの高純度な水素を回収することが可能になりました。一般に、水素だけを取り除く膜分離技術、あるいは二酸化炭素を取り除く膜分離技術は、研究段階ではすでにありますが、それを一体型にして水素をより多く得ることができる技術は私たちの新しいアイディアです。現在は研究開発段階で、装置のスケールを大きくして検証を行っていて、実際に製油所で利用できるかの判断を早期に行い、その後、商業化へと進める予定です。
私は、分離膜の研究のほか、水素の回収率を高めるためのモジュール構造を検討したり、私たちが思い描いているプロセスがきちんと実践できるかをプラントで確認したりしています。

新しい技術の開発はやりがいがありますね。

いままで誰も考えていなかったプロセスですので、頭で考えた通りにいかないこともあります。そのときに、原因を考えて実験を行い、私たちが思うような結果になる、それが進んでいく姿を見て体験できるのは非常におもしろいですね。特に膜分離は、学問レベルでは以前からいわれてきたものですが、工業レベルになるとまだ事例が多くありません。今回の研究では工業レベルまでもう少しの段階ですので、おもしろみとやりがいを感じています。

規模の大きさや利用者の多さが他社にない魅力

研究者に必要なスキルとはどのようなものですか?

研究者だからこのスキルを持っていなきゃいけない、というものは特にないと私は考えています。研究者にはいろいろな考えや姿勢があっていい。研究者になると信じて努力すれば、研究者になれると思います。私が努力していることといえば、例えばデータだけを判断材料にするのではなく、現場を必ず見て判断することですね。また、人が肯定していることに対して、多少否定的な見方・考え方をします。10人が10人、いいねといって走ってしまうと危険ですので、心の中で一度否定的に見て、それでも否定しきれなければ肯定します。要は、リスクになりそうなことを早い段階から考えておくことが必要だと思います。

入社して感じる会社の魅力はどのような点ですか?

当社は、規模が大きく、消費者が多い。言い換えると、利用する人が多い製品を扱う会社です。たくさんの人が使う製品の研究開発に携われることは、やりがいにもつながっています。同時に、消費者が多ければ、安心して提供できる製品を作らなければならないという責任も大きくなるでしょう。否定的な見方をすることも、その責任感からきています。
規模が大きく消費者が多いことは、入社の大きな動機のひとつでした。広くみんなのためを考えた研究開発を行っていて、その姿勢に共感して入社を決めました。実際、私の行っている研究は将来の地球を見据えた研究ですので、他の会社ではなかなか味わえないことだと思います。

これからJXTGエネルギーに入社する後輩たちへメッセージを。

当社に興味を持った方は、エネルギーに対して強い興味と関心を持った方だと思います。今後期待されるクリーンエネルギーのことや、石油の枯渇といった問題について、ニュースで流し読みするのではなく、しっかりと心に留めてじっくりと考えているのではないでしょうか。当社には、そうした皆さんと同じ考え・姿勢の研究者がたくさんいますし、皆さんを受け入れる体制や環境も整っています。また、当社にはいろんなバックボーンをもった研究者が集まっています。私も、大学時代は膜分離とは無縁の研究をしていました。そうした個性豊かな研究者みんなが、エネルギーのことを真剣に考える皆さんと一緒に仕事ができるのを心から楽しみにしています。

膜分離技術開発(水素製造・精製技術開発)

従来の技術よりも効率よく純度の高い水素を精製できる、ハイブリッド分離膜型水素精製装置。
燃料電池車で利用される水素は不純物がなく高純度であることが求められています。

膜分離技術開発(水素製造・精製技術開発)

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