研究者インタビュー ENEOSの花、咲かそう!

STORY 23 省燃費舶用エンジン油

STORY 23 省燃費舶用エンジン油 開発STORY   舶用エンジン油による省燃費削減効果を世界で初めて実船実証
中央技術研究所 守田洋子

研究所に加えて、本社での業務も経験したことのある守田さん。内容は変わっても、自分が担当する仕事に対しては、ケイトウの花言葉「情愛」のように、いつも愛する気持ちにあふれています。

Introduction

自動車では当たり前となっている、エンジン油による省燃費化。船舶ではほとんど検討されずにきましたが、2013年、国際海運でのCO2排出規制が発効し、CO2排出量を5年ごとに10%削減することが義務づけられました。これにあわせて当社では、2012年、2ストローク機関のエンジン油としては世界で初めて燃費削減効果を実船で実証しました。これは主にオイルの低粘度化によるものですが、船舶では、オイルの低粘度化はリスクととらえられており、守田さんをリーダーとするチームは、関係先への実船実証効果の紹介や提案など、次のステップに向けた活動に取り組んでいます。

業界の先陣を切って低粘度化の流れを作りたい

なぜ、舶用エンジン油が注目されているのですか?

船舶の世界では、省燃費に対する検討はあまり進んでいませんでした。しかし、リーマンショック以降、燃料コストを削減したいというニーズが顕在化したことに加えて、CO2排出規制が始まり、今後も段階的に規制が厳しくなっていくため、ニーズと規制の両面から省燃費が急速にクローズアップされてきています。ただ、船舶では燃費の“下げしろ”はけっこうありまして、例えば船型を流線型にしたり、プロペラなどのパーツを工夫したりすることで、燃費を下げることができます。そうした方策が検討されたのちに、エンジン油による省燃費が本格的に検討されると見込まれています。

具体的にはどのような研究を行っているのですか?

基本的には自動車の場合と同様で、エンジン油を低粘度化することで粘性抵抗によるエネルギーの損失を低減し、省燃費を実現するものです。自動車の場合と大きく異なるのは、容易に助けの得られない海の真ん中で船のエンジンが止まることは絶対に許されない点です。エンジン油を低粘度にすると油膜の厚さが減って、エンジンが焼きつくリスクが高まることになります。ところが船では、荒天時に波が荒くなると大きく揺れエンジンのピストンも揺れの影響を受けるなど不安定要素が多いため、むしろ余計に粘度を高くして信頼性を確保しておきたいとの考えがあります。既存のすべての機種のエンジンが低粘度のエンジン油に対応できるとは一概にいえず、エンジンを改良する必要も出てきます。こうしたことから、粘度は下げずに現状のままで良いと考えるエンジンメーカーが多いのが現状です。
そこで、まずはアピールできる実績をつくろうとの考えから、実船による燃費改善の実証を行いました。タンカーなど大型船のメインエンジン(2ストローク機関)にはシリンダ油とシステム油の2つが使われていますが、このうちシリンダ油についての実証を行い、省燃費効果と同時に信頼性も確認しました。数値としては、現行油に比べて1%に満たない改善率ですが、船舶でエンジン油による燃費改善を実証したのは世界で初めてですので、貴重な成果だと考えています。

現在はどのような活動を行っていますか?

実船実証での効果をもとに、エンジンメーカーをはじめ、海運会社などの需要家にも提案を行っています。データをお見せすると興味は持ってくださるのですが、「では使ってみましょう。」というところまでには、まだいたっていません。ただ、大きな潮流としては、船のエンジン油も低粘度化へ進んでいくと確信しています。非常に慎重な立場をとるエンジンメーカーの賛同を得て低粘度化を進めることは、チャレンジングな仕事ではありますが、私たちが業界の先陣を切って流れを作っていくんだという気概を持って取り組んでいます。

仕事はどれも、やればおもしろい

入社から現在までの経歴をお聞かせください。

私の経歴は社内では特殊だと思います。最初は研究所入社で、バイオ関係の研究開発を5年行いました。その後、本社に移り、品質保証部門に配属されました。化学物質の安全性に関わる仕事で、ちょうど世の中で重要視され始めた分野だったこともあり、やってみたらとてもおもしろくやりがいがありました。ここに15年ほどいて、再び研究所に戻って現在の研究を行っています。私はチームリーダーで、ほかに2名の研究者がいます。私の仕事の割合は、手を動かすのが6、マネジメントが4。中長期の計画を本社・販売部門と協議したり、次の商品ではどのような性能を訴求すべきかを考えたり、実験も行いながら、全体のスケジューリングをしつつ、チームとして研究開発を進めています。

研究者として果たしたい役割についてお聞かせください。

省燃費のように、お客さまが間違いなく欲していらっしゃること、つまり、お客様にとっての価値を形にして提供していきたいですね。その際には、お客さまが何を求めているのかを読み違えることのないように的確に察知することが必要です。これはとても難しいことで、例えば、お客さまは省燃費以上に長寿命性を求めていらっしゃるかもしれない。特に潤滑油は製品として確立された市場ですので、画期的なものを生み出すというよりも、お客さまのニーズの変化にいかに対応していくかが大切だと感じています。

これからJXTGエネルギーに入社する後輩たちへメッセージを。

私の経歴はお話したとおりですので、私自身は技術系であっても研究にこだわることもないのかなと思います。会社の中にはさまざまな仕事があるし、取り組んでみると仕事はどれもおもしろいですよ。先入観や固定観念に縛られずに、色々なことにチャレンジしてみるのもいいのではないでしょうか。私は入社時に、どうしてもバイオの研究がやりたいとわがままなことをいったのですが、その後の品質保証の仕事ではさまざまな部署と交流があったおかげで、モノづくりの研究開発から販売までの全体を見ることができ、また、社内での人脈も広げることができてとても良かったと思っています。現在の仕事も、自分たちで切り拓いていくところが、大変ではあるけれど、とてもおもしろい。若い皆さんにも、ぜひチャレンジしていただきたいなと思います。

省燃費舶用エンジン油

船舶ではほとんど検討されずにきたエンジン油による省燃費化。
2ストローク機関のエンジン油(シリンダ油)で世界で初めて燃費削減効果を実船で実証しました。
(下のグラフは陸上試験エンジンでの試験結果です。)

省燃費舶用エンジン油

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