研究者インタビュー ENEOSの花、咲かそう!

STORY 25 環境配慮型駆動系潤滑油

STORY25 環境配慮型駆動系潤滑油 開発STORY 多数かつ複雑なトレードオフをクリア、新車搭載のトランスミッションオイルを開発
中央技術研究所 辰巳 剛

ハードにあわせて潤滑油をつくるのではなく、潤滑油にあわせてハードがつくられる。そんなポテンシャルのある潤滑油の開発を夢見る辰巳さん。その想いには、デルフィニウムの花言葉「清明」のように、自らの研究に対する清く明らかな姿勢と自由な発想が垣間見えます。

Introduction

近年の環境意識の高まりにあわせて、自動車への省燃費ニーズも一層高まっています。当社でも、生産から運搬、使用、廃棄までの一連の流れにおいて従来商品よりも各種環境性能を向上させた「環境配慮型商品」として多様な商品をラインナップ。自動車のトランスミッションに使用される潤滑油も「環境配慮」をキーワードにした商品の開発に注力しています。その研究に携わる辰巳さんは、トランスミッションオイルに求められる多岐にわたる性能を満たすと同時に、地球環境への貢献を高次元で両立した商品を世に送り出しています。

トレードオフとの戦いに明け暮れる

どのような研究を行っていますか?

自動車用の潤滑油というと真っ先にエンジンオイルを思い浮かべると思いますが、もうひとつ不可欠なのがトランスミッションオイルです。トランスミッションにはAT、CVT、ハイブリッド、DCTといった機構があり、機構にあわせた専用の潤滑油の開発が必要となります。また、JXブランドで販売する製品と、自動車メーカーと共同で開発する製品がありますが、私が主に担当しているのは後者で、今回開発した環境配慮型の潤滑油は、北米市場でまもなく販売される新車のトランスミッションオイルとして使用されています。

具体的にはどのような研究を行っていますか?

現在は、潤滑油の粘性抵抗を小さくすること、つまり低粘度化することがトレンドです。粘度の高い潤滑油は大きな力がかかっても油膜が切れにくく、部品の保護機能が高い半面、撹拌される際の抵抗が大きくなり、エネルギーロスが発生します。粘度を低くすることで、撹拌抵抗を小さくし、エネルギーロスを抑えることで、自動車の燃費向上につなげることができます。一方で油膜が薄くなってしまうため、部品の保護機能を低下させない工夫が別に必要となります。こうしたトレードオフは、潤滑・保護、摩擦制御、動力伝達、油圧、冷却と多岐にわたる機能が求められるトランスミッションオイルにおいて、数多くかつ複雑に絡み合って存在しています。
トランスミッションオイルは、ベースオイル(基油)と性能添加剤から構成されています。性能添加剤は膨大な種類の中から、求められる機能に応じて複数組み合わせて使用しますが、1個の性能添加剤が複数の機能に関与するケースがほとんどで、トレードオフがきわめて複雑です。「こちらの性能を満たすと、あちらの性能が不足する」。そんな状況が刻々と繰り返され、トランスミッションオイルに求められる機能をすべて満たす組み合わせを見つけることは、まさに“戦い”といってもいいほど厳しいものがあります。そのため、過去の経験から自分たちが使いやすい手持ちの武器(添加剤)を常に増やすことを心がけ、それらを組み合わせることによってトレードオフを克服するような研究に力を入れています。

研究のやりがいやおもしろみは?

今回の環境配慮型潤滑油は、自動車メーカーの新車に搭載されるトランスミッションにあわせて開発しました。開発期間は4年ほど。トランスミッションオイルの開発は3年から4年かけるのが通常ですが、完成して「やった!」という達成感よりも安堵感のほうが大きかったです。この開発が終わって、現在は別の開発が走っていますので、旬の戦場が別の地域に移った感じです(笑)。トレードオフの研究は難しく大変ですが、パズルを解くような感覚で、完成したときの喜びはもちろん、取り組んでいること自体が楽しいです。

わかること・わからないことの境界線をつかむ

研究者に必要なスキルとは?

トレードオフの研究を通じて痛感しているのが、境界線を把握することの重要性です。どこまでわかっていて、どこからわかっていないのか。その境界線を把握するスキルが研究者には必要だと思います。自分自身、トレードオフに関わるもの同士の因果関係がすべて明確にわかっているわけではない中で開発をしています。わからない部分を残したままでもそれなりに開発は進みますし、進めないといけないのですが、わからない部分をあいまいなままにしていると、どこかで破綻をきたす危険性があり、実際に痛い目を見たこともあります。境界線を把握するのは意外と難しいのですが、自分がどこまでわかっているのかをきちんと整理して境界線を把握し、わかる領域を広げていくことが大事だと思います。

今後の研究について教えてください。

新しい潤滑油を開発するパターンには、まず、いまある自動車にあわせて新しい潤滑油を開発する形があります。次に、ハードを新しくして、それにあわせた潤滑油をつくる形。基本的にはこのどちらかであることが多いのですが、さらに、先に潤滑油が完成していて、それにあわせてハードをつくるという考え方もあると思います。潤滑油の性能を最大限に引き出せるハード設計を自動車メーカーにしてもらえるような、それだけの魅力とポテンシャルがある潤滑油を開発してみたいです。言い換えると、自動車の設計概念を変えるような潤滑油です。無理かもしれませんが(笑)、これまでのように、ハードに追従してきた潤滑油という立場をひっくり返せるような製品をつくることが私の夢です。

これからJXTGエネルギーに入社する後輩たちへメッセージを。

当社の潤滑油事業は国内販売シェア1位(2012年実績)を誇り、上り調子にあります。今後はさらに「世界No.1」をめざして潤滑油事業部門一体となり、日々頑張っています。この一体感と強烈に前向きなエネルギーは学生時代には味わえなかった、当社に入ってこその醍醐味と感じています。活躍の場所が数多く用意されているのが当社の魅力だと思いますし、一体感はどの職場でも味わうことができると思います。ぜひ私たちと一緒にJXTGグループのX(みらい)を切り開いていきましょう。

環境配慮型駆動系潤滑油

潤滑油の粘度は温度によって変化します。部品の耐久性を考慮し、粘度が低くなる高温の粘度を維持した従来の低粘度油では、低粘度化に限界がありました。
開発品では、配合技術により限界粘度を拡大することで、更なる低粘度化を達成し、大きな省燃費効果を得ることが可能となりました。

環境配慮型駆動系潤滑油

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