研究者インタビュー ENEOSの花、咲かそう!

STORY 26 透明高耐熱フィルム用モノマー

STORY26 透明高耐熱フィルム用モノマー 開発STORY 自社既存品の化合技術を応用し世の中にないまったく新しい製品を開発
機能化学品カンパニー 藤代理恵子

バラ(ピンク)の花言葉は、藤代さんの雰囲気をそのまま表現したかのような「上品」。「品質が良いこと」という意味もあり、藤代さんが開発に携わったフィルム用モノマーのことも重ね合わせているかのようです。

Introduction

近年、タブレットやスマートフォンのディスプレイ用に使用されるガラス基板の代替品として、有機フィルムの需要が高まっています。軽量で、落下しても割れないことが理由で、軽量化など端末商品の進化にも貢献しています。藤代さんが所属するグループでは、透明・高耐熱でかつ寸法安定性に優れた有機フィルムの原料となるモノマーを開発しました。試作品は、顧客となるフィルムメーカーから高い評価を受け、現在、量産化の検討を進めており、藤代さんもスケールアップやコストダウンのための検討に日々追われています。

新たな構造を生み出し化合物を生成

どのような研究を行っていますか?

タブレットやスマートフォンには本体内にガラス基板が使われています。ガラス基板は、ディスプレイの一部を構成するもので、薄膜の半導体などを装備するためのもの。このガラス基板よりも軽く割れることもない有機フィルムに替えたいという需要が高まっており、私たちのグループでは、その有機フィルムをつくるための原料を開発しました。開発にあたっては、化合物を合成するための反応が3種類あり、私はそのひとつを担当したほか、現在は量産化の検討を行っています。

開発のポイントとなったのはどのような点ですか?

当社には、独自開発のENB(エチリデンノルボルネン)という製品があります。自動車のラジエーターホース、ワイパーや窓枠に使われているゴムの原料として用いられ、高い評価を受けています。この事業で培った技術を応用して、今回のモノマーが開発されました。ENBの化合物の構造と同様の構造を持つ製品ができれば、性能を満たす高品質な原料がつくれるのではないかという予測が以前からあり、それに合成の技術等を組み合わせることで、新たな構造をつくり出したものです。
ディスプレイの製造工程では熱をかける工程があります。ガラス基板の場合は問題ないのですが、有機物だと高熱になると分解されてしまうので、耐熱性は不可欠です。加えて熱をかけるとフィルムの場合は伸びてしまうので、膨張を少なくする寸法安定性も必要です。できるだけガラスに近いレベルの耐熱性と寸法安定性、それとディスプレイ用なので透明性。この3つのそれぞれの性能を満たす有機フィルムはすでにありましたが、そのすべてをクリアしたものはこれまでありませんでした。今回、当社独自の分子設計を活かすことによって初めて3つの性能を兼ね備えたフィルムを与えるモノマーを見出し、ラボで合成技術を確立して製品化のためのプロジェクトを立ち上げることができました。

研究で難しかったことは?

研究室のフラスコレベルで実験してうまくいっても、大きいスケール・大きい装置で実験するとうまくいかなかったことが何度かありました。例えば温度を上げるのも、フラスコならすぐに上がりますが、大きい装置だと何時間もかかりますし、撹拌の状態なども小さい装置と大きい装置ではまるで違います。うまくいかなかった場合は、その課題を持ち帰って検討して改善するということの繰り返し。でも、大きい装置でうまくいき、はじめて良い性能が出たときには、達成感を感じました。その後、フィルムメーカーに持ち込んでみようという話へと進展していったのもうれしかったですね。

社会に変化をもたらす素材の開発を

現在の研究のおもしろみは?

当社は石油会社ですので、これまでファインケミカル分野の製品は決して多いとはいえません。でも、石油だけでなく、ほかの分野にも事業を広げているなかで化学製品にも一層注力していますので、今回のフィルム用モノマーを製品として世に出すことができれば、これからの研究のひとつの良い事例になるのではと思っていますし、そうした点におもしろみを感じています。ですから、現在進めている量産化に向けてのコストダウン等の課題をクリアし、製品として早期に販売できるようにしたいですね。

研究者として社会に果たしたい役割とは?

今回のフィルム用モノマーもそうですが、タブレットやスマートフォンのように、たくさんの人々が日常的に使うものが、軽量化するなど素材の面から大きく変わっていくことがあります。ひとつの新しい素材が社会に大きな変化をもたらしたり、一般の人々が使うものをより良く改良できたりするような可能性のある素材を開発していけたらいいなと思っています。新しく良いものをつくることや研究テーマを見つけることは、すごく難しいことで、研究者としても相当経験を積まないとできませんが、いずれは自分で新しいものを最初から考えて、事業にできるようになりたいと思います。

これからJXTGエネルギーに入社する後輩たちへメッセージを。

当社は日本のエネルギー業界において大きな役割を担っている会社です。責任は大きいですが、やりがいのある仕事が数多くありますし、さまざまな分野で経験を積んだ先輩社員の方々と接するのは若い人にとって本当に勉強になると思います。私のように化学研究に携わる人もいれば、新エネルギーの研究をしている人もいます。もちろん事務系の職種のように、私たちとはまったく違う業務をしている人もいます。同じ会社でも、人によって仕事が違い、いろいろな仕事があると私自身も入社して感じたので、とてもいろいろな経験ができる可能性がある会社かなと思っています。皆さんも入社されましたら、ぜひ自分の持ち味を活かすとともに、いろいろな人と接してたくさんの経験をして活躍してください。

透明高耐熱フィルム用モノマー

透明高耐熱フィルム用モノマー

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