研究者インタビュー ENEOSの花、咲かそう!

STORY 29 ディーゼル自動車に適合した軽油の品質設計

STORY29 ディーゼル自動車に適合した軽油の品質設計 開発STORY ノートラブルを実現する着火性と低温性能を両立させた軽油を開発
中央技術研究所 井口靖敏

スイートピー(ピンク)の花言葉は「繊細」。相反する2つの性能を両立させるために物質を制御したり、製油所ごとに添加剤の量などを検討したりする井口さんの緻密な研究内容をそのまま表しています。

Introduction

一般にパワーがあり燃費が良いとされるディーゼル自動車が、近年見直されています。特に、クリーンディーゼルエンジンなどの環境問題に対応する技術開発が進んだことが大きな契機になりました。こうした市場状況にあわせて、当社では最新のディーゼル自動車に適合した軽油の開発に注力。井口さんをはじめとした研究者たちが、ディーゼル自動車のシステムの変化や燃料油の需要変化に対応した軽油の品質設計に取り組んでいます。

ワックスの微細化と量の管理に注力

研究のポイントはどのような点ですか?

軽油に求められる性能はいくつかありますが、その中で重要なポイントとなるのが、着火性の確保と低温時の運転性の確保です。着火性能は高いほうがよく、軽油中の炭化水素の成分で見ると直鎖パラフィンが着火性の高い物質ですので、これが多いほうが好ましい。しかし、直鎖パラフィンは融点が高く、低温時にはワックスとして析出し、燃料配管中のフィルターを目詰まりさせて燃料が供給できなくなる懸念があります。そのため低温性能の観点からは直鎖パラフィンは少ないほうがいい。つまり、冬場には着火性と低温性能を両立させるための品質設計が非常に重要になります。

具体的にどのようにして開発しましたか?

低温性能を確保するために2つの方法を取り入れました。一つは、ワックスの結晶のサイズを小さくすること。添加剤を用いてワックスを微細化して、フィルターを通過しやすいように制御します。もう一つは、軽油中のワックスの量を制御して、目詰まりしないようにすることです。サイズと量の両方を管理し、かつ着火性を損なわないように、バランスをとりながら品質設計を行いました。
また、同じ軽油でも、原油の種類や製油所の装置の構成などによって、軽油中の炭化水素の種類や分布が微妙に異なります。例えば、A製油所で効果が得られた添加剤が、B製油所で同じ効果が得られるとは限りません。品質設計ではそうした点にも留意して、製油所ごとに添加剤の種類や量などを検討し、決定しました。
このように我々は北海道から沖縄まで、その地域や季節による気温の違いを考慮し、最適な軽油の品質のための研究を行っています。

研究において重視していることは?

軽油に限らず燃料油は、自動車になくてはならないものです。いわば縁の下の力持ちのような存在で、毎日皆さんが使うようなものは、常に問題なく使え、トラブルを起こさないことが当たり前ともいえます。ですので、当たり前のことを、きちんとやっていくことが重要なのかなと思います。当社のこれまでの研究成果が現状のノートラブルに結びついていると思いますし、今後もこれを継続したいですね。

コミュニケーション能力が最も大切

研究者に必要なスキルとは?

コミュニケーション能力がとても重要だと思います。研究活動は、グループやチーム内では複数の人と行います。さらに軽油の品質設計では、研究所のソリューションセンターの試験分析グループに分析をお願いしたり、実用試験グループには指定した燃料を車に積んで確認試験をしてもらったり、さまざまな方と一緒に仕事をする機会が多い。また、分析を依頼する場合には、研究の背景や内容、どういったことを求めているのかなどを理解してもらう必要があります。さらに、いくつもの研究グループが分析を依頼しているので、日程について他のグループとの調整も必要になります。会社での研究は一人ではできませんので、コミュニケーション能力が最も重要かもしれませんね。

研究者として社会に果たしたい役割とは?

いま自動車に求められているものとして、排出ガスの低減や燃費の向上があります。石油会社ではサルファーフリーなど燃料品質の面で貢献してきました。現在、低燃費の観点から見ると自動車会社が頑張っていますが、「石油会社も燃費に貢献できるか」という研究が必要ではないかと感じており、そのような研究をしたいなと思っています。

これからJXTGエネルギーに入社する後輩たちへメッセージを。

コミュニケーション能力はどんな仕事をしていくうえでも必要なので、それにプラスして、いろいろなことに興味を持ってほしいと思います。何か一つのことに専念することも大事ですが、それ以外のことにも広く興味を持って情報を収集できる能力があると、すぐに役立たなくても、長い間仕事をしていくなかで役に立つ時がくるでしょう。また、情報収集においては本や論文を読んだりネットで調べたりするのも重要ですが、その分野に詳しい人と仲良くなって話すほうが深い情報は得られるし、自分の理解も深まると個人的には感じています。私の場合は、社内の人はもちろん、学会などで出会った社外の人たちとも積極的に話をするようにしています。その意味でもコミュニケーションは大切ですね。

ディーゼル自動車に適合した軽油の品質設計

軽油中のノルマルパラフィンは着火性が良く、エンジンの始動性を確保するためには大切な成分ですが、低温になるとワックスとして析出し、燃料フィルターを詰まらせて、冬季における運転性悪化の原因となってしまいます。
そこで、我々はワックス微細化技術などにより、冬季におけるディーゼル車の運転性を確保するための軽油を開発しています。

ディーゼル自動車に適合した軽油の品質設計

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