研究者インタビュー ENEOSの花、咲かそう!

STORY 32 有機ハイドライドによる水素貯蔵・輸送技術

STORY32 有機ハイドライドによる水素貯蔵・輸送技術 開発STORY 水素社会構築に貢献する触媒技術開発を推進中
中央技術研究所 杉浦行寛

大学時代にエネルギーや環境と触媒反応に興味を持ち、現在は水素社会の実現を思い描く杉浦さん。スプレーカーネーションの花言葉である「情熱」を内に秘め、「熱心」に研究に取り組んでいます。

Introduction

水素を燃料とする燃料電池自動車(FCV)は、輸送部門において、CO2排出量を削減できる切り札の一つとされています。当社では、安定して水素を供給するために、有機ハイドライドによる水素貯蔵・輸送技術を開発。水素をメチルシクロヘキサンという液体の状態で貯蔵・輸送し、水素ステーションにおいて水素を取り出すシステムで、杉浦さんは、その心臓部とも呼べる脱水素反応器の触媒の開発を行っています。

高活性&高寿命の脱水素触媒の開発へ

有機ハイドライドとはどのようなものですか?

有機ハイドライドとは、水素を化学的に貯蔵する炭化水素のことです。いくつかの種類がありますが、水素の貯蔵量や融点、原料調達など総合的に評価して、メチルシクロヘキサン(MCH)を用いた水素貯蔵・輸送技術を開発しています。MCHは、水素含有量が高く、繰り返し使用でき、既存のタンクローリーやタンクなどを利用することもできます。さらに長期保存が可能で、効率よく水素を輸送できるなど多くのメリットがあります。現在の水素の輸送方式には、水素を45MPaに圧縮して運ぶ高圧方式がありますが、1台の高圧トレーラーで運べる水素量はFCV約120台分です。これに対して有機ハイドライド方式では、通常のタンクローリーでFCV約300台分を運ぶことができ、安定した水素の供給が簡単に行えるようになります。

研究内容と技術開発のポイントは?

有機ハイドライド方式では、水素をトルエンに付加してMCHを生成し、それをタンクローリーで水素ステーションへ輸送します。次に水素ステーションではMCHから脱水素して水素を取り出し、燃料電池自動車へ水素を供給します。このときポイントとなる技術が二点あります。
一つめは、脱水素反応器によって水素を効率よく取り出す技術です。私が担当する脱水素触媒がこれにあたります。脱水素触媒は、高活性であることと、それを維持できる耐久性が重要です。非常に難しいことですが、高い耐久性を持ち、かつ性能を担保できる触媒の開発の目途はつきつつあります。二つめは、取り出した水素から不純物を取り除き、高純度化する水素精製技術です。これは、低コストかつ高効率であることが求められます。これら技術の開発によって、水素ステーションに設置できるコンパクトな脱水素システムを開発することをめざしています。
体積当たりのエネルギー密度の低い水素を効率的に貯蔵・輸送できる技術を開発して、水素社会の構築に貢献したいと考えています。

研究のやりがい、おもしろみは?

大学時代の研究テーマは、NOの選択還元反応。この研究を通して触媒反応に興味を持ち、いまも触媒反応はおもしろいなと思っています。活性や耐久性の向上を求めていろいろ考えて取り組みますが、思い通りにいかないことも多い。その中で試行錯誤して、最終的につくりあげるのが好きですね。

礎となる技術の開発で水素社会の実現に貢献

ご自身の研究方法とは?

研究開発テーマが決まっている場合は、目的の反応だけでなく、類似の反応に関する文献や学会発表から触媒設計の方向性を得ることが重要と考えています。半面、学術分野での検討で用いられる触媒は、そのままでは実用化が困難なので、量産性や成形性、反応性の観点から実用触媒を開発する必要があります。現在行っている開発も、大学との共同研究を活用し、過去の経験と知見を活かしながらメーカーと共同で開発を進めています。

研究者に必要なスキルとは?

うまくいかないことは多々あるので、諦めずに考え続けることが大切と考えています。諦めて思考を停止した時点で終わりですが、考え続ければ何かしらの答えが出て、次のステップに進むことができる。研究者は、これを繰り返すことが大切です。Where there is a will, there is a way.「意志あるところに道あり」。諦めない、達成する、という強い意志が道を拓くと思います。

研究者として社会に果たしたい役割とは?

水素社会の礎となる技術を開発し、水素社会の実現に貢献したいですね。いま私が行っている有機ハイドライド方式の研究は、会社の収益云々というよりも、日本の将来のためというような大きなテーマだと考えています。10年先20年先まで見据えながら、国としても考えなければならないし、当社も何らかの形で貢献していこうとしています。そうした大きな意義のある研究に醍醐味を感じています。また、有機ハイドライドの研究で培った触媒技術は他の反応にも適用できると考えられるため、研究終了後は、培った技術を世の中のニーズに合った触媒開発、具体的には水素製造・貯蔵・輸送といった水素社会の構築に関わる技術開発に活かしたいと考えています。

これからJXTGエネルギーに入社する後輩たちへメッセージを。

当社を、自分の夢を実現する場のひとつの候補として考えてほしいですね。私が研究している水素だけでなく、当社はさまざまな研究に取り組んでいます。自分の夢があり、またエネルギーに興味がある方にとっては、絶好の場になると思います。

有機ハイドライドによる水素貯蔵・輸送技術

有機ハイドライドによる水素貯蔵・輸送技術

「ESSO」・「Mobil」は、エクソン モービル コーポレーションの登録商標です。ライセンス契約に基づいて使用しております。