研究者インタビュー ENEOSの花、咲かそう!

STORY 37 炭化水素膜分離技術

STORY37 炭化水素膜分離技術 開発STORY これまで実用化されていない炭化水素膜分離の技術確立を推進
中央技術研究所 玉井七奈

研究にはチームワークが欠かせないという玉井さん。その根底には、カンパニュラの花言葉にもある周囲への「感謝」や、研究への「誠実」な想いがあるのかもしれません。

Introduction

さまざまな成分が混じっている石油留分を製品にするためには、その用途に応じて石油留分を分離・精製する必要があります。分離方法としては、多くの場合、成分の沸点差を利用する蒸留が用いられますが、沸点が近い成分を分離する際には設備が大型化し、エネルギー消費も大きくなるため、実用が適さないケースもあります。これに対して膜分離は、膜を通るか通らないかで分けるというシンプルな機構。より簡単に分離ができ、省エネです。玉井さんは、2020年度末の技術確立を目指して、膜分離技術の開発に取り組んでいます。

実用化が難しかった技術の確立が間近

研究内容はどのようなものですか?

膜分離技術を石油精製プロセスに適用し、石油留分を高付加価値化することを目的としています。研究テーマのひとつが「燃料油基材の膜分離」です。石油を蒸留して得られる留分は、現状、燃料油基材としてのみならず、石油化学製品原料としても用いられています。現在、両方の用途に向けた区別をせずに使用していますが、この留分を膜で分離することで、いままで一緒になっていた[X+Y]という成分を、成分[X]、成分[Y]という、それぞれの用途に適した成分に振り分けることができます。これにより、[X]は付加価値の高い石油化学製品を増産可能であり、同時に[Y]によって燃料油基材としての品質も大きく向上するという、一石二鳥のメリットが得られます。

開発の経緯や進捗状況は?

当社では過去に水素精製やアルコールの脱水などのテーマで膜分離の技術開発を行ってきました。これを本業の石油精製にも利用できるのではないかと、いくつかの可能性を検討した結果、燃料油基材の膜分離がもっとも有望との判断から研究がスタートしました。
炭化水素膜分離の技術は、これまで実用化されていません。分離性能の高い膜をつくるのが非常に難しいというのが理由のひとつです。また、燃料油基材を蒸留でそれぞれの成分に分類しようとすると、コストがかかり、多額の投資をしてまでやるメリットはないとされるのも理由です。こうした問題を解消するために、高性能な膜を利用した分離技術を開発しています。分離すればメリットがあるとはわかっていながら、性能やコストの面で実現が難しかったものが、膜分離技術の進展によって、一挙に解決することが可能になるでしょう。
私が主に担当しているのは、膜分離プロセスにおけるスケールアップ技術開発です。最初は、ラボレベルの数cmの小さな膜をつくり、性能評価を繰り返しました。その結果を受けて、プロセス条件の改善や膜製造技術の改善につなげ、現在では数十倍のサイズへとスケールアップでき、好結果が出ています。こうしてスケールアップする過程で性能評価とその結果に基づくフィードバックを行い、改善を図っていくのです。
この研究は2020年度末の技術確立を目指しています。これまで順調にステップアップしてきており、次はさらにスケールアップし、数十本、あるいは数百本の高性能な膜を束ねて、所定の性能を発揮するか検証していく予定です。

今後の研究の目標は?

これまで、炭化水素の分離には実用化した例がありませんので、まずは現場で使える技術として完成させたいですね。これが大きな目標です。ひとつの技術を完成させて実績ができれば、応用できるものはあると思います。夢物語かもしれませんが、石油精製などにおいて膜分離技術がたくさん応用されていったらいいなと思います。また、今後の需要拡大が見込まれている石油化学製品を簡単に分離・製造できる技術として活用できたらいいなとも思っています。

研究者としての土台の上に深さと幅を

研究者として社会に果たしたい役割とは?

限りある資源を有効活用できる、地球にやさしいプロセスを開発したいと考えています。いまエネルギー用途での石油の国内需要は減退していますが、主に石油からしか製造できない付加価値の高い製品もあり、限られた石油資源をいかに有効利用するか、いわゆる「石油のノーブルユース」がカギとなっています。当社の研究開発では、ノーブルユース実現のため、低付加価値な原料から高付加価値な製品を製造するとともに、より省エネとなるようなプロセスの開発を行っており、私の携わる膜分離技術でも、限りある資源を簡単に低コストで分離できるという、資源の有効活用に資する技術となることを目指しています。

理想とする研究者像は?

私は学生時代、テニス一筋でした。ですので、ひとつのことに打ち込むのもいいと思いますが、最近は、自分の幅を広げるために、さまざまな経験をすることも必要だなと感じています。
理想とする研究者像としては、まずは土台をしっかりつくりたいですね。そのうえで、深さと幅を身につけたい。深さには知識が必要で、幅は多種多様な経験がないと広がらない。そう考えています。
JXエネルギーに入って、さまざまなバックグラウンドを持った方々に出会い刺激を受け、私も挑戦できる人になりたいなと思うようになりました。仕事だけでなく、私生活においても、フラワーアレンジメントやダイビング、ホットヨガなど、いろいろなことに挑戦中です。

これからJXエネルギーに入社する後輩たちへメッセージを。

学生時代に、自分の強みをつくるといいと思います。部活でも研究でもバイトでも何でもいい。「誰にも負けない根性がある」とか、「何があっても諦めない」とか、自分の良いところを伸ばすのが大事だと思います。当社は総合エネルギー企業なので、非常にたくさんの分野があります。職種も研究、プロセス管理、プラント保全、販売など、多岐に渡っていますし、製品もたくさんあります。だから学生時代に培った自分の強みを活かして活躍できるフィールドがきっとあります。ぜひ皆さんの個性を発揮して活躍していただきたいですね。
私の場合、学生時代はテニス部の部長をつとめていました。そのため先輩や後輩とのつながりを大切にし、チームとしてどうするのか、自分が引っ張るのか、相手にやってもらうのかなど、調整する力が養われたと感じています。この力は、チームワークを基本とする研究にも役立っているのではと思います。

炭化水素膜分離技術

炭化水素膜分離技術

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