研究者インタビュー ENEOSの花、咲かそう!

STORY 38 スクリーン用透明フィルム「カレイドスクリーン」

STORY38 スクリーン用透明フィルム「カレイドスクリーン」 開発STORY 抜群の透明度を誇るスクリーンを開発し
シーズとニーズのマッチングを実現
中央技術研究所 松尾 彰

わかりやすく明解に、相手の立場を踏まえながら話をする松尾さん。チューリップの花言葉である「思いやり」や気遣いを感じさせる姿勢は、仕事にも存分に発揮されているようです。

Introduction

通常、プロジェクターで投影するスクリーンは白や灰色など不透明なのが一般的です。これに対して当社が開発・販売した「カレイドスクリーン」は、ほぼ透明で、窓ガラスに貼っても背景を遮ることなく、プロジェクターの映像を映すことが可能です。こうした透けるスクリーン(透明スクリーン)はこれまでも販売されていましたが、カレイドスクリーンは抜群の透明度を誇っています。松尾さんは、この画期的ともいえる製品のもっとも基礎となる部分の研究開発を担いました。

展示会に出展したことで新たな展開へ

カレイドスクリーンとはどのようなものですか?

最近は“透明”と呼ばれるスクリーンもいくつかあります。しかし、その透明度は70%程度。スクリーンに光を当てたとき、反対側に透過する光は70%ということです。これに対して「カレイドスクリーン」の透明度は90%と世界最高水準です。ほぼ無色透明で、それでいて、プロジェクターの映像を映すことができます。実際に、例えば、自動車ディーラーのガラス面に貼り付けたカレイドスクリーンにプロジェクターの映像を映しながら、かつショールーム内に展示された自動車も見えるようして広告効果を高める、といった活用が可能です。

開発の経緯はどのようなものですか?

発端は、独立行政法人科学技術振興機構(JST)の産学連携のプロジェクトへの参画でした。ここで、ある大学教授からナノダイヤモンドを使用することで透明のスクリーンが製造できるとアドバイスがありました。しかしナノダイヤモンドは高価で品質も安定しない。これに変わるものはないかと展示会に出かけては使えそうなもののサンプルを片っ端から集め、その中から適した物質を探し出しました。これをフィルムの内部に埋め込むことによって、カレイドスクリーンの開発につなげたという流れです。研究のポイントとしては、大学教授からのアドバイス、ナノダイヤモンドに代わる物質を見つけられたこと、さらにこの物質とフィルムを組み合わせたことがあげられます。
開発当初は社内から、「面白いけど、何に使えるんだ?」との疑問の声もあがりました。それなら展示会に出展して世に問うてみようと、新素材の展示会に出展すると、大きな反響をいただいたんです。特にあるイベント会社からは「すぐに使いたい」とのお申し出をいただきましたが、この時点ではスクリーンは幅10センチ程度と、実用できるレベルではありません。そこで急きょ、実用化に向けて改良とスケールアップを進め、1年後に製品として提供することができました。そのイベント会社では、カレイドスクリーンを使ったプロジェクションマッピングなどのイベントを、大阪や東京で行い、大きな反響を得ました。
このように、カレイドスクリーンは、シーズとして生まれた技術がお客様のニーズにマッチングした製品だといえると思います。

カレイドスクリーンの今後の展開は?

近年、デジタルサイネージや大型液晶パネルなどによる広告が普及しています。現在のカレイドスクリーンの活用の中心は夜間のイベントですが、今後は夜間にとどまらず、幅広い時間帯に広告としての活用ができるよう、改良していく方針です。
また、最近、人気を集めている超短焦点のプロジェクターにも対応できるようにしていきたいですね。そのためには、フィルム内部の粒子も変える必要がありますので、あらためて物質を探し出すことから始めようと考えています。

趣味と実益を兼ねて実験器具を自作

研究の面白みややりがいは?

カレイドスクリーンの開発は、お客様のニーズがよく見えないところから始まりました。しかし展示会への出展を通じて、ニーズの見えないものにも、実はニーズが隠されていたんだと気づかされ、お客様から「もっとこうしてほしい」「こうしないと使えない」といった要望や意見をお伺いし、それにどう対応していくかを考え、実践した。これが研究の醍醐味ですね。展示会では、お客様の半分が「面白いけど、どう使うんだ」という感じでしたが、あとの半分は「こうすればいい」といったアイデアや要望をお持ちでした。そこでシーズとニーズがマッチングできたわけですが、そうしたプロセスもとても面白く、やりがいになっています。

理想とする研究者像は?

理想像は「実験上手」。ルーティンワークも含めて、改善できることはないかを常に考え、積極的に改善していきたいですね。その一環として、実験に使える道具などを自作するケースがあります。私は日曜大工が趣味なので、趣味と実益を兼ねているわけです。工作や道具のカタログを見まくって、これを使えばあの実験がラクになるなーなんてよく考えていますよ。例えば、光の反射などを測定する際、会社の測定器を利用すると操作が煩雑だし時間もかかるので、本格的な測定の前に簡易的に簡単・即座に測れる測定器を自作しました。
趣味としての日曜大工は最近はやっていませんが、昔は机や本棚をつくり、いまでも使っています。日曜大工用の作業台も自作しましたよ。そこまでやるかといわれますけどね(笑)。

これからJXエネルギーに入社する後輩たちへメッセージを。

受け身ではなく、積極的に自分で考えて提案してほしいなと思います。
当社では、ある程度会社に慣れると、新人でも実験を任せてもらえるようになります。そのとき実験を行って、「こうなりました」だけでなく、「こうしたらどうでしょう」という提案をしてほしいですね。よほどダメなことでない限りは、やってみようといってくれる会社です。こうしたチャンスはいくつもありますので、変な我慢や遠慮はせずに、皆さん自身が好きなことをやってほしいなと願っています。やりたいといえば、やらせてくれる。そんな自由な風土がある会社です。

スクリーン用透明フィルム「カレイドスクリーン」

スクリーン用透明フィルム「カレイドスクリーン」

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