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このページは、目次の中の第1編の中の第2章の中の第3節 石油製品の製造工程のページです。

製油所精製工程の概要

製油所の精製工程の一例を図 1-2-3-1 に示す。我が国では、原油は中東などの産油国から原油タンカーで製油所に運ばれ、いったん原油タンクに貯められる。

原油は、まず常圧蒸留装置において、沸点の差により、ガス、LPG、ナフサ、灯油、軽油および残油留分に分離される。これらの沸点範囲は、表 1-2-3-1 の通りである。分離された留分は、そのままでは製品となるものはほとんどなく、さらに水素化精製装置、接触改質装置、接触分解装置、重油脱硫/分解装置等で処理される。

これらの精製された留分を調合することにより、石油製品が製造される。

また製油所内で発生したガスは、主に各装置の燃料として利用される。水素化精製装置等で発生した硫化水素は、硫黄回収装置で硫黄に転化し回収される。

図 1-2-3-1 石油精製工程の一例
表 1-2-3-1 各留分の沸点範囲
ガス分 メタン(沸点-163℃)
エタン(沸点- 89℃)
LPガス プロパン(沸点- 42℃)
ブタン(沸点- 1℃)
ガソリン  35~180℃
灯油 170~250℃
軽油 240~350℃
残油 350℃以上

ガスおよびLPガス

常圧蒸留装置や接触分解装置などから発生するガスは、製油所の燃料として使用される。接触改質装置からのガスは多量の水素を含んでいるため、水素化精製装置などの水素源として使用される。

また、常圧蒸留装置や接触改質装置のLPガスはLPガス回収装置で精製、分離され、製品プロパン、製品ブタンとなる。接触分解装置からのLPガスにはオレフィン分が多く含まれ、石油化学の原料となるほか、アルキレーション装置やETBE(Ethyl Tertiary Butyl Ether)装置の原料としても活用される。

ナフサおよびガソリン

常圧蒸留装置等からのナフサは、水素化精製装置で硫黄分を除去した後、軽質ナフサと重質ナフサに分けられる。軽質ナフサは、ガソリンの基材あるいは石油化学用原料として使用される。一方、重質ナフサは接触改質装置に張り込まれ、オクタン価の高いガソリン基材に変えられる。また接触分解装置、アルキレーション装置、異性化装置などからもガソリン基材が製造される。これらの基材を調合し、製品ガソリン(オクタン価の違いによりレギュラーとプレミアムがある)を製造する。

灯油、軽油およびジェット燃料

常圧蒸留装置からの粗灯油、軽質軽油を水素化精製装置で処理し、灯油、軽油を製造する。最近は環境対応の観点から、軽油の低硫黄化に対処すべく、軽油深度脱硫装置が導入されている。また灯油、軽油の需要増に対応するため、水素化分解装置が数多く建設されている。

ジェット燃料には灯油留分のみのものと、ナフサと灯油留分を調合して製造するものとがある。

重油

常圧蒸留装置の常圧残油、減圧残油、脱硫残油や接触分解装置の軽油留分等を調合して、重油が製造される。重油は粘度によりA、B、C重油に分けられる。

最近は環境への配慮から重油需要が激減し、これに対処するため、多くの重油脱硫/分解装置が建設されている。

潤滑油

潤滑油の精製工程を図 1-2-3-2 に示す。まず常圧残油を減圧蒸留装置により、数種類の潤滑油留分に分離する。減圧残油に含まれるアスファルト留分は溶剤脱瀝装置で分離される。潤滑油留分は溶剤抽出装置により粘度指数が向上され、水素化仕上げ装置で色相改善、硫黄分が除去され、さらに脱蝋装置で流動点が改善される。このように精製された基油を調合し、添加剤を加えて製品とする。近年は更なる粘度指数向上に向け、分解系の高度精製基油や化学合成系基油も用いられている。

図 1-2-3-2 一般的な潤滑油製造工程

アスファルト

減圧フラッシング装置・減圧蒸留装置の残油や溶剤脱瀝装置の残油を直接調合して、ストレートアスファルトを製造する。また減圧残油を加熱、空気を吹き込んで酸化、脱水素、縮重合等により性質を変化させたブローンアスファルトを製造する。

パラフィン蝋(ワックス)

パラフィン蝋は、潤滑油製造工程で溶剤脱蝋装置により分離された粗蝋から油分を完全に除去し、精製して製品とする。

グリース

グリースは潤滑基油に増稠剤(ぞうちょうざい)や、必要に応じて添加剤を加えて、製品とする。

硫黄

水素化精製装置や接触分解装置等から出てくる硫化水素を多量に含むガスは、そのまま燃料ガスにすると亜硫酸ガスの発生が著しいので、硫黄回収装置で硫黄分を取り除いて使用する。

硫黄回収装置は、ガス中に含まれる硫化水素を分離する工程、分離された硫化水素から硫黄を回収する工程および回収しきれない硫黄分を除去するテールガス処理工程からなる。

回収された硫黄は、液状のまま、あるいは塊状、粒状、フレーク状に成型して出荷される。



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